短編集 | ナノ

 10




あのパイズリという恥ずかしい行為を体験してから、数週間が経った。あれから東堂先輩と俺との仲が崩れたり、逆に進展したりするわけもなく、いつも通りの普通の生活を送っている。
…とは言っても、東堂先輩のスキンシップは若干ながら増えたと思っている。隙あれば俺の身体を触ってくるのだ。それも主に胸を。恥ずかしくて「触らないでください」と勇気を出して抵抗してみれば、「そんな格好をして俺の前で居るももが悪い」と逆に俺が責められたのはまだ記憶に新しい。

水泳の補習授業のためスクール水着一枚しか着てないけどさ。別に俺は悪くないよな?…そういえば、補習授業もそろそろ終わりなんだよなぁ。寒いし、泳ぐのあまり好きじゃないから早く終わって欲しいとも思うけれど、やっぱり終わったら終わったで寂しいと思う。だって東堂先輩と関わる時間が少なくなるのだから。

制服に着替えながらはぁと溜息を吐けば、すかさず東堂先輩から「どうした?」と声を掛けられた。


「あ、いや、何でもないです」

「…そうか」

「は、はい」

本人目の前にして、補習授業が終わるの寂しいですなんて言えるわけがない。そんなの恥ずかしくて死ぬ。東堂先輩に聞こえないようにもう一度溜息を吐いてると、急に後ろから抱き締められた。


「な、何ですか?」

び、びっくりした。
心臓止まるかと思った…。


「何か悩み事でもあるのか?」

「……え?」

「浮かない顔してるから」

「せ、んぱい」


心配、してくれてるのかな…?ああ、やっぱり先輩は優しい人だ。


「大丈夫です」

「…本当か?」

「はい、わざわざありがとうございます」

「…何かあったら、俺に言えよ」


本当に東堂先輩は優しい人だ。
……で、でもさ、何でナチュラルに人の胸を後ろから揉んでいるんだろうか、この人は。


「ちょ、せ、先輩っ」

「…ん?」

「さ、わらないでください…、」

「やだ」

やだ、ってそれはこっちの台詞だよ。
先輩に触られると何か変な感じがするから苦手なんだ。

身を捩って逃げようと試みるのだが、力の差は歴然で全然びくともしない。むしろ俺が抵抗すればするほど、俺の胸を揉む東堂先輩の手の動きは激しさを増しているような気がする。


「ン、…っ、先輩、」

「可愛い、もも」

「……っ、」

止めてくれー…。
耳元でそんなエロい声で囁かれたら腰砕けてしまいそうだ。

どうやって東堂先輩から逃げようかと思案していると、俺は胸を揉まれながら次の瞬間愛しの人から衝撃的な言葉を掛けられることとなったのだ。


「東堂、先輩、止めてくださいっ」

「もも…」

「…ァ、…ん?」

「胸、大きくなったな」

「…?!」


それはもう、本当に衝撃的で。
漫画的な効果音を使うと、ズガガガガーンといった感じだった。





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