▼ 8-6
「あ、うわ…っ」
「こら、暴れんな」
「…と、うどう先輩」
自分から東堂先輩を誘うようなはしたないことをしたくせに、いざとなると恐怖を感じてしまう。服を脱がされそうになり俺は焦って手足をバタつかせる。しかし東堂先輩は俺の抵抗なんてものもともせずに、シャツのボタンに手を掛けてきた。
「もも、大人しくしろ」
「あ、…ぁ」
「暴れんなって」
余計興奮すんだろ、…そう言いながら、自分の上唇を舐めながら舌舐めずりをする東堂先輩は、最高にエロくて格好良い。まるで狩りを楽しんでいる肉食獣に見える。
だ、だけど駄目だ。このまま流されちゃ駄目。東堂先輩のために俺がしてあげるんだ。俺の着ているシャツのボタンを全て外し終えて、胸元を弄ろうとしている東堂先輩に俺は再び声を掛けた。
「だ、めですっ」
「…俺を煽ったのはももだろ?」
「せ、んぱい」
「こうなった責任取れよ」
「ひ、…ァ?!」
グイっと腰を下腹部に押し付けられる。するとゴリっと音が立ちそうなほど硬い物で腹を圧迫された。
「…っ、ぅ」
「な?」
「あ、…大きく…っ」
それが分からないほど俺も馬鹿ではない。
更にグイグイっと腰を押し付けられて、俺は身体中がグワッと熱くなるのを感じた。
「最高に良くするから」
「…とう、どうせんぱ…」
「だから、抵抗すんな」
「ち、違……」
「……もも?」
興奮からか、ハッ…と熱い息を吐く東堂先輩。その低い声と熱い吐息が首元に掛かり、俺は自分が今東堂先輩から“そういう対象”に見られているのだと思い、恥ずかしさやら嬉しさで赤くなっているであろう顔を隠そうと両腕で顔を隠そうとする。
しかし東堂先輩がそれを許さず、すぐに俺の腕を掴んでくる。欲情を抱いた瞳で見下ろされながら、俺もおずおずと東堂先輩の瞳を見返した。
「どうした?」
そして幾度も抵抗を繰り返す俺に、東堂先輩も俺が何かを訴えていることに気が付いたのだろう。何もせずに、聞きの体勢に入ってくれた。
「お、俺が…」
「……?」
「俺が、先輩を気持ち良くしてあげたい!…です」
決意を込めて放った俺の台詞には、すぐに返事が返ってこなかった。
恥ずかしくて俺は上唇を歯でキュッと噛む。
今なら羞恥で爆発出来るかもしれない、そんな馬鹿な事を考えながら現実逃避をしていると、…不意に髪の毛を撫でられた。
「もも」
「は、…はい」
「あんまり、そういう事言うな」
「…やっぱり、嫌でしたか?」
「あ?」
はーと溜息を吐いて俺を見下ろす東堂先輩に、俺の目元に涙が溜まる。
“断られた”。そう思うと悲しくて堪らない。
「ご、めんなさい。俺、出過ぎた真似を…」
「馬鹿、…違う。」
「で、でも」
「俺はそういう意味で言ったんじゃなくて、」
「……?」
「加減出来なくなりそうだから、困るって言ったんだよ」
ももは俺のツボを心得過ぎ…、と涙で滲んでいた目元にチュッと優しく唇を落とされた。
「……ツボ?」
「天然でやっているから、なおタチが悪い」
「……ご、めんさい…?」
東堂先輩の言っている意味が分からず、俺は首を傾げた。すると東堂先輩は俺の髪の毛を掻き混ぜるように撫でてきた。
「…ももが、やってくれるのか?」
「……え?」
「俺を良くしてくれるんだろ?」
「い、…いいんですか?!」
「いいも何も、俺が断れる訳ねぇだろ。そんな可愛いももの頼みを」
「……お、俺、頑張ります…っ」
俺がそう意気込んで言えば、東堂先輩は笑った。
そして俺の上から身体を退き、近くにあった備え付けのベンチに腰を掛けた。
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