▼ 7-2
●ももside
「…せんぱい、」
「もも」
必死に抵抗すれば、きっと優しい東堂先輩のことだから離してくれるだろう。それなのに抵抗しない自分が居るということは、…胸を触られることに羞恥を感じても嫌悪感は抱いていないということ。
俺は緊張に喉を鳴らして、口内に溜まった唾を飲み込んだ。
「す、少しだけなら…」
震える声を絞り出してそう言えば、東堂先輩は口元を緩めて微笑んだ。
…やっぱり東堂先輩の笑みは柔らかくて好きだな。そんな事を思いながら東堂先輩の顔を見続けていると、何故かどんどんと距離が近くなってきた。
「え、…ちょ、…ン…?!」
そしてそのまま唇を塞がれた。
…もちろん東堂先輩の唇で。
触れるだけの優しいキス。いきなりのことにパニックになっていると、東堂先輩の少しカサついている唇はすぐに離れていった。
「………、」
俺は反射的に唇に指を当てる。
…先程、俺の唇と東堂先輩の唇が重なっていたのだ。人生初のキスは、とても優しかった。
「キスのやり方は、追々教えてやる。」
「………っ、」
「ももは息継ぎが下手だからな。」
「……は、はい…」
きっと林檎以上に真っ赤になっている俺をからかっているのだろう。ここは怒るべきなのかもしれないが、俺はそんな余裕もなしに、次からの濃厚なキスを想像して更に恥ずかしくなったのは言うまでもないと思う。
「…えっと」
「ももの心臓の音が俺にまで聞こえる。」
「だ、だってっ」
「…緊張してるのか?」
「あ、当たり前ですよ…」
「可愛い」
「…先輩…」
「大丈夫。酷いことはしねぇよ。」
「……ぁ」
「今日は、優しくするから。」
「(…今日は?)」
東堂先輩の右手が近づいてきた。
凄く恥ずかしいけれど、東堂先輩なら大丈夫だ…。俺の胸を見て、嫌悪していなかった人なのだから。
そして自分の胸に東堂先輩の大きな手の平が触れたことに、俺は一度身体をビクッと震わせてから息を吐いた。
「……ん」
「柔らけぇ…」
「そんなこと、言わないで…」
ああ、やっぱり恥ずかしい。
自分の胸が男の人に触られているなんて凄く変だ。
変だけど、…何だろうこの感じは?
「触るだけなんて、満足出来ねぇ。」
「……え?」
「揉んでいいか?」
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