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●東堂side
「先輩は、凄いですね。」
「……何が?」
「泳ぎがとっても上手です!」
柊と水泳の補習授業を受けることになって二週間が経った。二週間も好きな相手の裸(特に胸)を見るだけで触れないなんて、本当に辛いものだが、俺にとっては凄く楽しい一時だ。
触りたいとか、その胸を揉みしだいてやりたいとか、…邪な事を挙げればきりがないのだが、今はただ柊の側に居れるだけで満足。
…と、思っていた一週間前。
どうも最近は抑制が効かなくなっている。
「俺、東堂先輩みたいに上手く泳げないから…」
「…………」
「…息継ぎが得意じゃなくて…」
「……教えてやろうか?」
「え…、いいんですか?!」
「…ああ。」
「あ、ありがとうございます」
「……………」
そう。
最近はどうも上手く抑制出来ない。
「…こ、こうですか…?」
「力み過ぎだ。」
「……ぁう…」
「…もっと力を抜いてみろ。」
「は、い…」
教えるために、柊の身体に触れる。
ただ泳ぎを教えているというだけなのに、こうも意識している自分が居る。でも俺は悪くないはずだ。健全な一般男子ならこれが普通。
それに、これは全部柊が悪いんだ…。
その柔らかな肌が、その白い肌が、その男にはないはずの胸の膨らみが、…俺を魅了してやまない。
「…先輩…、こうでいいですか?」
「…………」
「東堂先輩?」
「…………」
好きだと言えばどうなるだろうか?
この思いを伝えればこの胸の痛みから開放されるのだろうか?
柊は受け入れてくれるだろうか?
…それとも、拒絶されるのだろうか?
この思いを告げて、柊に拒絶されるのが怖い。
まだ自分に「怖い」という人間らしい感情が残っていたことに、思わず苦笑する。
だけど、伝えたい。
「好き」だと言いたい。
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