▼ 3-2
●東堂side
「と、取り合えず…泳ぎ、ますか…?」
どうやら柊なりに話を逸らしたようだ。
無理矢理感が否めない話の逸らし方に思わず頬が緩んでしまう。
「そうだな。」
未だ顔を赤く染めたまま足を水の中に恐る恐る入れている柊。…するとすぐさま水の中から足を抜き、ふにゃっと泣きそうになりながら俺の方に顔を向けてきた。
「つ、冷たい…ぃ」
…可愛い。
そう思ったものの、また機嫌を損ねてしまいそうだから声には出さない。そのまま泣いてしまえばいいのに…。
確かに今は10月の初め。
水泳の授業が終わったのが9月の半ばだったから、仕方がないことなのだが。柊にはその水温は耐え難いものらしい。
「一気に入ってしまえば、慣れるんじゃねぇか…?」
そう思った俺はもっと柊の色々な表情が見たいがために、柊の背中を押して無理矢理プールの中に入れた。
バチャンッ!
水の音が鳴り響く…。
「…ひ、ぃ…っ」
そして柊の悲鳴のような声が聞こえてきた。
あまりの冷たさに声が出ないようだ。
苦痛に歪む柊の顔も、また一段と可愛い。
「どうだ?…大丈夫だろ?」
柊の様子を見て決してそうは思わないが、悪戯心で訊ねてみた。
ああ、やばい。もっと苛めたい…。
「…ひ、ひどい、です…っ」
目元に涙を滲ませて俺のことを弱弱しく睨み付けてくる柊のあまりの可愛さに、思わず興奮してしまいブルリと身体が震えた。
そして俺はそこで気が付いた。
柊の小振りな胸の中心にある乳首が、あまりの水の冷たさで立っていることに…。
「……せ、んぱい…?」
まさか俺がそんな邪な事を考えているとは思ってもいないだろう。柊は黙り込んだ俺を不思議に思い、首を横に傾げている。
だが俺は柊の胸から視線を外せないままでいる。
摘んで捏ねて、舐めたら柊はどのような反応をするのだろうか。想像すると、思わず喉がゴクリとなってしまった…。
「東堂先輩、入ってくれないんですか…?」
「……っ、」
駄目だ…。
柊の普通の台詞すらもエロく感じてしまう。柊は俺にも早く水の中に入れと言っているようだが、俺には柊が自分の中に早く入れと強請っているようにしか聞こえない。
「…そうだな。」
頭を冷やすべきだ。そう思った俺は水の中に身体を入れる。すると柊は少し楽しそうに俺に訊ねてきた。
「冷たくないですか?」
「……いや、今は丁度いい。」
「そうですか、俺だけかなぁ…?」
まだ柊の身体に触ってもいないのに、ここまで反応している自分もどうかと思う。それ以前に俺はこれから一ヶ月ほど続く補習授業を、柊に手を出さず終えることが出来るのだろうか。
楽しそうに泳ぐ柊を横目に、手を出さず終えることなんて出来そうになく、俺は心の中で柊に謝ったのだった。
END
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