「…高瀬って凄いね。」
「ん?」
「なんだか…、俺なんかじゃ全く、」
“釣り合わない”と言おうとしたところで、口を高瀬の手で覆われてしまい最後まで喋れなかった。
「…それ以上言うな。」
「でも………、」
「…仁湖は自分の魅力に気が付いていないだけだ。」
「お、…俺に魅力?」
そ、そんなものあるわけないじゃないか。
俺に魅力なんてものがあれば、とっくに彼女の一人や二人くらい出来ていたはずだ。
……まぁ、でもお世辞だろうけど高瀬にそう言って貰えて嫌な気はしない。
「うん、ありがとう。…もう言わない。」
ニヘラと馬鹿みたいに顔の筋肉を緩めて笑えば、高瀬も笑ってくれた。
そして高瀬はまた俺の腫れた頬を舌でペチャっと舐める。
「……ちょ、…もうそれ…やめろって。」
「何で?」
「…な、何でって……、」
それは決まってるだろ?!
は、恥ずかしいから嫌なんだよ…っ。
普通男子高校生が男子高校生の頬を舐めるか…?
「高瀬、…駄目…っ」
端整な顔を近づけて、ペチャペチャと音を立てて舐められて来る高瀬に、感覚からも視覚からも聴覚からも羞恥を感じる。
「消毒だから気にするな。」
「…本当に…?」
「………まぁ、多少下心はあるがな。」
「へ?」
「……なんでもねぇよ、気にするな。」
そう言って高瀬はクシャクシャっと頭を撫でてくれた。
だから俺は言われた通り気にしない。
「……高瀬…、怒ってない?」
「最初から怒ってなんかねぇよ。」
「本当?」
「あぁ。」
「あのさ、…だったら、また……朝にメールしてくれる?」
本音を言うと、今日高瀬からメールが来ていなくて凄くショックだった。
……俺が高瀬を怒らせて傷付けたせいだけど……。
「嫌というほど送ってやる。」
「じゃ、…じゃぁ、また俺と朝早くに話してくれる?」
「当たり前。」
「………また俺の家来てくれる?」
「………あぁ、俺の理性が保てればな。」
「…じゃ、…じゃぁ、また一緒に、
………寝てくれる?」
そう訊ねると、俺の頭を撫でていた高瀬の手がピタっと止まった。
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