「……たか…せ、」
「……仁湖。」
「え…?あ、…名前……知ってるの?」
「当たり前だろ?お前の名前だって誕生日だって血液型だって、…俺は全部覚えてる。」
あ、…そういえば前高瀬に誕生日や血液型訊かれたときがあったな。
…覚えてくれてたんだ。
嬉しいな。
「仁湖、…ごめん。」
「…え、…ひゃ…?!」
高瀬はそう言うと、俺の腫れて熱を持った頬をペチャっと舐めてきた。
高瀬の信じられない行動に、俺は目を白黒させる。
「……痛むか?」
「…だ、大丈夫。」
頬の痛みよりも、今は高瀬の舌でピチャピチャと舐められる緊張と恥ずかしさで心臓が痛い。
「………仁湖、今回のは俺が全部悪い。だからお前は全然悪くない。」
「違…っ」
「いいから、最後まで聞け。」
「う、…うん。」
「俺が焦り過ぎたんだ。…だから仁湖を悩ませた。」
「………ん…」
頬の次は濡れた目元を舐められて、おもわずゾクッと身体が震える。
「……それと、…本当は仁湖が殴られる前から俺は近くに居た。」
「…え?」
「仁湖から俺の助けを求めるまで待ってた………だからこの傷も俺の所為だ。」
「見てたの?」
「……あぁ。」
そして高瀬はその後、また「悪ぃ」と俺に謝った。
「…俺が悪いが、…仁湖覚えとけ。」
「な…、何?」
「…今度危険な目に合いそうなときはすぐに俺の名前を呼べ。…そしたら何処に居たってお前を助ける。例え国外に居ようが何処に居ようが、仁湖が呼べばすぐに駆けつけるから。」
……うわ………っ。
何て格好いい男なんだ、高瀬は……。
こんな優しい表情で、優しい顔で、こんなことを言われちゃ照れてしまう。
…きっと俺が女ならすぐに落ちていたはずだ。
「…う、うん。分かった。」
「…………しかし、こいつむかつく。」
ドゴッ!
骨でも折れたのではないのか思うくらいの力で高瀬は、俺を殴った男の横腹を蹴り上げた。
「…ちょ、…た、…高瀬っ!」
……し、しかし、高瀬は俺の椅子を蹴るとき加減してくれてたんだ。
こんな力で蹴られてちゃ、俺の椅子はグチャグチャになっていたかもしれない。
81/300