「………たかせ…、」




圧倒的な力で簡単に男たちを気絶させた高瀬は、俺に近づいてきた。






「………あ、……えっと…、」






言うんだ。
今謝らないと…。
きっと二度と高瀬と話せない気がする。





「………た、かせ…、」




だけど殴られた痛みのせいか、心の痛みのせいか、緊張のせいなのか、上手く喋れなくどもってしまう。


口をパクパクさせる俺に、高瀬は何を思ったのか俺の頬に手を添えてきた。




「………悪かった。」





「え………？」





「お前を傷つけた……。」




高瀬はまた悲しそうな表情を浮かべて、先ほど殴られた俺の頬を優しく撫でる。





「違っ、…これは、俺の…せいで、俺が全部悪いんだ。」




俺は添えられた高瀬の手をギュッと掴む。

……本当に俺は最低だ。
何でこんな優しい人にあんな酷いことをしたんだろう？


………何で高瀬はあんな酷いことをした俺に、まだ優しくしてくるの？

高瀬の優しさに、自然に涙ぐむ。






「俺が、…高瀬を傷つけて、…それで、…ふ…ぅ、俺、…自分が分からなくて、…」





「うん。」





「…どうすればいいのか、…どう、…ひっく…、接すればいいのか、…ふ…ぁ、…んく、何もわかんなくなって…、」





「うん。」



嗚咽を交えながら、文章にならない言葉を喋り続ける俺に、高瀬は急がせるわけもなく所々相槌を加えながら、俺の話に耳を傾けてくれた。






「…う…ぇ、何も分からなくなって、…全てから逃げ出したくなって、…ふ…、高瀬を無視しちゃって…、」



ついにポロポロと大量の涙が流れ出す。
その涙は必然的に、俺の頬に手を添えている高瀬の手に掛かっていく。
高瀬はその涙を指で拭ってくれる。





「……違う、…ひっく、…こんなんが言いたいんじゃなくて、……だから、…高瀬に言いたかったのは、」





「何？」





「ご、…ごめんなさい。……ぅ、…それと、ありがとう。」




溜まっていく涙で上手く前が見えなかったけど……、






「…泣き虫。」





高瀬の優しい声を聞いて、怒ってないことが分かった俺は安心して、さらに涙を流す。