「聞いてるのか…?どうなんだ?…答えろよ。」
「……………ぅ…」
昨日同じベッドで寝たときくらい、顔を近づけられる。
昨日とは違うのは、高瀬の顔が物凄く怒っている表情だということ……。
こ、怖い…。
こんな高瀬は見たことない。
だけどこんな風に高瀬を怒らせてしまったのは、紛れもなく俺だ。
「……ふ………っ」
恐怖やら悲しみやら全ての負の感情が混ざり合い、目には涙が溜まってしまいおもわず嗚咽が出る。
「……………っ」
そして高瀬は俺の今の状態に気が付いたのか、一瞬ビクッと身体を震わせた後、ゆっくりと掴んでいた俺の胸倉から手を離した。
「………ぅ………え」
涙は意地としても流さない。
だけど出したくもない嗚咽が出てしまう。
今にも泣き出しそうな俺の顔を見て、高瀬は顔を歪めた。
……何だか、高瀬も泣きそうな顔をしている。
「………悪かった…。」
そう言って高瀬は俺の頭を一度撫でると、教室から出て行った。
「…………………」
クラスメイトも担当の教師も、俺を不思議そうに見る。
きっと今の出来事を見ていたのだろう。
俺はその大勢の視線よりも、高瀬が見せた悲しそうな表情が頭から離れず気になって、全てを塞ぎこむように机に顔を埋めた。
…高瀬は帰りのHRが始まっても、教室には帰って来なかった。
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