戸惑い








「…教科書、忘れた。



…見せろ。」





実はこの会話は最初に言われたときから、ずっと続いている。

今まで俺は、怖くて抵抗も出来ずに高瀬の言う通りに、教科書をくっ付いている机と机の間に置いていたんだけど、







……この五限目の数学で初めてその言葉を無視した。








「………………」






「………………」






「…おい、聞こえてねぇのか?」





「……………」





こんな至近距離で聞こえないわけがない。
それはきっと高瀬が一番分かっているはず。




…だけど、俺はこの何の所為なのかよく分からない胸の苦しみが、高瀬に関係しているのだと分かり、高瀬の言葉に耳を傾けようとはしなかった。
これ以上俺の心の中を土足であげるわけにはいかない。





…餓鬼くさい考えだよな…。
それは分かっている。俺が一番そのことは分かっているけど、



…分かっているけど、どうしようもない。

馬鹿は馬鹿なりに色々と悩んでいるんだ。








「…………おい、」





「…………………」






「……………クソっ、…」





ずっと黙って無視をする俺にとうとう高瀬はキレたのか、俺の椅子をガンっと蹴ってきた。



…蹴られるの久しぶりだな……、なんて悠長に考えている俺は結構耐性がついたのかもしれない。








「………無視するなよ…。」





「…………ひ…っ」





椅子を蹴られることには慣れていたが、急にグイっと胸倉を掴まれて、俺は殴られるんじゃないかと思い、恐怖に引き攣ってしまった声を漏らす。




73/300
<< bkm >>
MAIN TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -