にこ








四限目まで無事に終わり、俺は溜息を吐く。




え?何で溜息を吐いたか、だって?





…決まってるだろ?
テストが返ってきたからだよ…。
まぁ、本当に何ていうか才能と言わんばかりに、全て平均点並みのテスト結果。


唯一平均点より良かったのは、英語。




…これは高瀬のお陰だよな、うん。






………って、あっ!


や、やべー…。
テストの結果にショックを受け過ぎて、高瀬の昼飯の食券買うの忘れてた…。




ど、どうしよう。
怒られるかな……。今日もパンでいいだろうか?








「…た、高瀬、お昼ご飯パンでもいい?」




俺は高瀬から預かった9500円が入っている、がま口財布を鞄から取り出しながら、高瀬に訊ねる。






「……………」




あ、あれ?
返事なし?

…表情は怒っているように見えないし、………パンでいいのかな?





「えっと、…パン買って来るね。」




「……………」




俺は無表情のままの高瀬に返事を聞こうとはせずに、食堂にパンを買いに財布を持って行こうとすると……、











「…………にこ……。」










「……え?」







後ろから聞こえてきた高瀬の声に、俺は動きを止める。


え?
あ、あれ?

…い、今、高瀬………もしかして俺の名前…、











「………に、………二個ずつ買って来い。」







「……あ、………二個…、う、うん。分かった。」





俺は心臓をバクバクさせながら、教室を出る。






…び、びっくりした。
高瀬に、“仁湖”って呼んで貰えたかと思った。




そ、そうか。“二個”か。



確かに、仁湖と二個って発音似てるっていうか、…ほとんど同じだもんな。





……た、高瀬が俺の名前なんか知ってるわけねぇじゃんか。



べ、別に呼んで貰いたいとかそんなんじゃないけど……、







何で俺、







こんなに……、







顔が熱いんだろう…。






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