きっかけ








「………………」





「……………」






「………………」








…あぁー、沈黙が辛いっ。
な、何か話せよ。
だから一緒に帰るの嫌なんだよ…。



ど、どうしよう。
あ、…もしかしてこれって、…俺から話しかけなくちゃいけないのか?




で、…でも何て?
んっと、ここは「高瀬の家はどの辺り?」とかかな?







いや、待てよ。

俺なんかがそんなこと訊いたって、「てめぇには関係ねぇだろうが!」とか言われるに決まってる…。






…ふぅー、とりあえず俺の家に着くまで頑張ろう。









「…………ん?」




意気込んでいると、手が硬くて温かいものに包まれた。




……え?






ふと自分の手を見てみると、





やはりと言うべきか、








…高瀬に手を握られていた。









「………えっと、…な、何してるの?」






ここ結構人通り多いんだよ?
なぁ、知ってるか?
女子高生が、凄い好奇の目でこっち見ているんだぞ?









「……は、離せよ…」




きっと抵抗すれば怒られるだろうと思っていても、やっぱり変な目で見られるほうが嫌だ。








「…………駄目だ…」








「…なんで?」











「………お前が、







迷子になると危ねぇだろうが…」









…はぁっ?
あ、阿呆かこんにゃろう…!



危ねぇのは、お前の頭じゃねぇかっ。
いつも通っている道を迷うわけねぇよ。




な、何だこいつは?
一体何を考えているんだ?




…ただ俺の手を握りたかっただけじゃねぇのかよ?







くそっ、むかつく。
何だよ?
そんなに男のフニフニした手は珍しいかよっ?!







「……………っ」




だ、だけどやっぱり恐くて逆らえない。
きっと無理矢理手を払ったら、また怒るんだろうし…。






この日ほど、学校から家の距離が遠いことに、不満を感じることはないだろう…。






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