「………高瀬、ありがとう。お陰で、助かったよ。」
「……あぁ。」
…えっと。
こういった場合どうすればいいのかな?
やっぱり「一緒に帰ろう」とか誘ってみるべきかな?
で、でも俺から高瀬を誘うなんて…っ。
恐すぎる…。
きっと「誰がお前なんかと帰るか、ボケ」とか言われるのがオチだろう。
「…………家は?」
「え?」
「……送るから、案内しろ。」
えぇぇっ?!
ま、まさか高瀬から言い出してくるとは…っ。
びっくりだ…。
で、でも家を教えてもいいのだろうか?
教えたら最後、一生金を集られることになってしまわないだろうか……。
いや、さすぎにそれは考え過ぎだし、そんなこと思ったら高瀬に失礼だよな。
今日は俺のために、こうして勉強まで教えてくれたっていうのに…。
「えっと、…嬉しいけど送らなくてもいいよ。」
女の子じゃあるまいし、家まで何事もなく帰れるはずだ。
「………………」
「そ、…その、もしよかったら、途中まで一緒に帰らないか?」
「……………」
途中って何処までか分からないけど。
高瀬の家と俺の家って方角一緒なんだろうか…?
「……駄目だ、送る。」
「……え、でも……」
“高瀬に悪いよ”と言おうとしたところで、ギロリと睨みつけられて、俺は「ヒィー」という声しか出なかった。
「……送るから、家を教えろ。」
「………は、はい。」
俺は恐くてこれ以上何も言えずに、ただ頷いた。
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