高瀬は机をジッと見た後、ギロリと俺を睨みつけてきた。
「……ひっ…!」
恐くておもわず声が漏れてしまった。
高瀬はそんな俺の声に余計に苛々したのか、再び俺の椅子をガンッと力強く蹴ってきた。
「……ひ…ぁっ!」
蹴られてガクンと衝撃がくる。
倒れはしなかったものの、…恐怖で涙が出そうだ。
何で?
何で蹴ってくるんだ?
お、俺何かした?
高瀬の神経を逆立てるようなことをしたか?
俺の頭の中はパニック状態だ。
そして高瀬は地を這うような低い声で喋る。
「……教科書…、忘れた。
見せろ。」
一限目のときに聞いたことある台詞だった。
俺は唇を噛み締めたまま、コクコクと何度も首を縦に振った。
高瀬は「見せろ」と言ったが、それ以上は喋りも動きもしない。
か、考えろ。
高瀬を怒らすようなことをするな。
えっと、「教科書を見せろ」と言われた。
一限目のときは高瀬に教科書を渡すと、返されて机を引っ付けられた。
だから、
俺は恐る恐る、自分の席を動かして、高瀬の机とくっ付ける。
「これでいい?」という目線を涙目になりながらも、高瀬に送ると、ふっ…と高瀬は柔らかく笑った後、
俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
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