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「仁湖」

「……う、ん…?」


気持ちよく寝ていた所を、肩を数回揺さぶられて起こされた。それに対して少し不満そうな声を出せば、隣から苦笑交じりの声が聞こえてきた。



「起こしちまって悪い。」

「…たかせ?」

「あと少しで終わりそうだ。」

「…あ、…集会」


クリアになってきた視界で周りを見渡せば、未だに前の方で教頭先生が喋っているのが見える。どれくらい寝てしまっていたのだろうか。
俺は寝る前と同じように高瀬の肩に寄り掛かっていたのだ。



「ご、ごめん」



高瀬の体温と匂い、そして俺の頭を撫でてくれる高瀬の優しい手付きにぐっすりと寝てしまっていたらしい。バスの中でも十分というほど寝ていたというのに。それに比べて高瀬はこの長い移動の間一睡もしていないのだ。
俺はこれ以上高瀬に負担を掛けるわけにいかなくて、急いで身体を離す。



「まだ寄り掛かっていろ。」

「重い、だろ…?」

「重くねぇよ。」


むしろその重みが心地良い、と優しく笑みを浮かべながらそう言い放つ高瀬に、おもわず胸が高鳴る。



「…っ、…な、んで…」

「……仁湖?」

「何で、そう恥ずかしい事サラリと言えるの…?」



ばかばかばーか…っ。
俺って本当に馬鹿。
俺だけ意識し過ぎじゃないか。高瀬の言動に一々大袈裟に反応しちゃってさ。

ああ、どんどん頬が熱くなってくる…。




「仁湖、顔真っ赤。」

「煩いよっ」

「可愛い…」

「も、…もう、う、うるしゃい…っ、…?!か、噛んじゃったじゃんかー!も、もう…、馬鹿馬鹿」

「……ぶは…っ」



何でこんな所で噛んじゃうだよっ。
高瀬が吹き出して笑ったのが分かって、俺は余計に恥ずかしくなり顔を赤らめる。



「わ、笑うな…!」

「……仁湖、可愛すぎ…」

「可愛くなんてない!」

「ああ、本当に愛くるしい…」


このまま押し倒したいくらいだ、とニヤけながら言う高瀬に、俺は集会中だということを忘れてそのまま高瀬の事を罵倒し続けたのだった。




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