ましゅまろ、ふにふに







修学旅行のしおりが配られてから三日が経った。中身には大まかな行事内容や注意事項が書かれている他に、持ってくる物が細かく書いてあった。
だから俺は前もって高瀬に今日一緒に買い物をしようと声を掛けていたのだ。
高瀬は嫌な顔せずに、了承してくれた。



「高瀬は何買う?」

「…特に決まってねぇな。」

「持っていく物、もう揃ってるんだ。」


揃っているというのに、わざわざ買い物を付き合ってくれる高瀬は本当に優しい人だ。
高瀬の事を外見だけで判断して、道を歩けば色々な人が高瀬の事を遠ざけていくのが少し悲しく思う。…だがそれとは正反対に女子高校生や綺麗なお姉さん達が高瀬を見てキャーキャー黄色い声を上げるのが少しだけ気に喰わない。
ああ、俺は本当にどうしようもなく性格が悪い。

高瀬の事を怖いと思ってほしくないと思っているが、必要以上に見ないで欲しいと思ってしまう。俺って凄く「執着心」というのが強いのだと思う。



「………仁湖?」

「え、…あ、いや、何でもないよ。」


いけないいけない。
折角の二人きりの買い物なのに、勝手な妄想で悩んで嫉妬してたらきりがない。
……というか今思ったけど、これって「デート」なのかな?そう意識してしまうと、少し恥ずかしい。



「二人で買い物って、久しぶりだな。」

「う、うん…。」

「…どうした?何かいつもと違ってぎこちねぇな。」

「だって…」

「もしかして、緊張してるのか?」

「……え?!」


態度に出てしまっていたのかな。
緊張している事を指摘されて、余計に恥ずかしく思う。何だか変に意識し過ぎているのかもしれない。



「緊張してるの、ばれた?」

「ああ。」

「…恥ずかしいな…」

「可愛いな、仁湖は。」

「う、うるさいよ…っ」

「…実は俺も、柄になく緊張してる。」

「……え?」

「手、…繋いでもいいのかどうか凄い悩んでる。」

「……っ、」


ここは結構人通りの多い所だ。
学校帰りの人達も居れば、スーツを着た人達も大勢居る。同性同士というのに嫌悪感を抱く人も居るはずだ。“そういう目”で見られるのは嫌だけれど、…高瀬と手を繋ぎたいというのも事実だ。



「俺は仁湖と手を繋ぎたい。」

「……高瀬…」

「これはデートと思ってもいいんだよな?」


ふわりと優しく微笑まれ、俺はその高瀬の仕草と表情に見惚れてしまい頬が熱くなっていくのが自分でも分かった。…俺は照れ隠しに俯きながら、小さくコクンと一度だけ頷いた。



「…本当に可愛い。」

「……い、わないでよ」

「このまま襲いてぇくらい。」

「……っ、」

「理性保つから、手繋いでもいいか…?」

「…ど、どうぞ…」


むしろ俺も繋ぎたいと薄々思っていた。
人目を気にしろこのバカップルと言われようが罵られようが俺は気にしない。高瀬と一緒に居られるこの瞬間がそれ以上に大切なのだ。

高瀬は一度俺の髪の毛をグシャグシャと撫でるように掻き混ぜてから、俺の手を取る。
高瀬の大きな手の平に包まれる。高瀬の体温が伝わってくる。



「…ましゅまろ」

「懐かしい事、言うな。」

「本当に柔らかい。」

「………も、もう…」


本当に高瀬は俺の心臓を壊す天才じゃないのかと思ってしまう。




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