世界で二番目の幸せ者







「………ん…」


雀のさえずり。
カーテンを遮って入ってくる日差し。
…俺は目を覚ました。

そうすれば身体中が痛みに悲鳴を上げていた…。
昨夜喘ぎ過ぎたため喉が痛い。
泣き過ぎたため目が重たい。
つらい体勢のまま長時間居たため腰が痛い。
…そして高瀬の大きすぎるペニスを銜えたお尻の穴が痛い。


「……ふ…ぅ、」


痛い、痛いよ…。
今まで味わったことない痛みに耐え切れず、俺はギュッと目を瞑って蹲る。


「…、た…かせ…」


何処?何処に居るんだ?
…どうしよう迷子になった子供のような感覚に陥ってしう。
怖い、怖い。何で高瀬は俺の側に居ないのだろうか?
やだ、一人にしないで…。


「高瀬、…た、かせ…!」


俺は嗄れた声で高瀬の名前を呼ぶ。
決して大きい声ではなかったが、今の俺なりに精一杯声を出した。年甲斐もなくポロポロと勝手に出てくる涙を手の甲で拭いながら、高瀬を思う。

…すると声が届いたのか、それとも俺の思いが届いたのか、寝室の扉が開いた。
そこには高瀬の姿。泣きじゃくる俺の姿を見て驚いているようだ。だがそんなことどうでもいいんだ。早く高瀬に触りたい。早く高瀬に抱き締めて貰いたい。


俺は重たい腰を上げ、ベッドから降りようとした…。



「……仁湖…?!」

「…ふぅ…っ、たかせ…ぇ」


…しかし自分の身体ではないかのように足腰がいうことを利かない。案の定尻から床に落ちてしまった。



「…痛い…ぃ」

「仁湖、…仁湖…っ」


あんなに行為中は気持ち良かったというのに、初めてのセックスはやはりそんなに甘いものではなかったようだ。今になって痛みがどんどん湧き上がってくる。
泣きじゃくる俺を見て高瀬は凄く辛そうな顔をする。

…ああ、そんな顔しないでくれ。
俺は高瀬にそんな顔させたいわけではないんだ。



「…たかせ…、」

「仁湖、悪い。…辛いよな?痛いよな?」

「……ふ…、ぅ…」


そして高瀬は労わるように俺の背中を撫でてくれる。
優しい台詞と背中から感じる高瀬の温もりに安心して、俺は泣きたくもないのに、次から次へと涙を流す。
俺はギュッと高瀬の逞しい身体に自分から抱き付いた。

違う。高瀬を不安にさせたいわけではない。
確かに今は辛いけど、高瀬と繋がれて幸せなことは変わりない。

それを伝えないと。
高瀬に早く伝えないと、不安にさせてしまう。そんなのは嫌だ。



「…たかせ…っ?」

「……どうした?何処が痛い?」

「ち、…がうくて…、」

「………?」


何て言えば高瀬に伝わるだろうか。
パニック状態に陥いってしまい、俺は何も考えられず、ただ今の自分の思いを言葉にした。


「俺、幸せ…。高瀬好き…っ、

俺は世界一の幸せ者だよ…っ」


しゃくり上げながら声を出したため上手く高瀬に伝わったか分からない。だが高瀬が驚いたかのように一瞬目を見開いた後、すぐに優しい笑みを浮かべたので、俺の思いが伝わっただと感じた。


「そうか…。だが仁湖、…世界で一番幸せ者は、こんなに思って貰えている俺だぜ。」


それは譲れねぇよ、と嬉しそうに微笑む高瀬に俺は改めて高瀬に恋に落ちてしまった。





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