愛を伝えるその指先








「…っ?!わ、…え、な…に?」


沈黙が続く中、不意に高瀬と視線が合ったことで俺は更に緊張が増していた。なので身体を縮こまらせて俯いていたのだが、不意に高瀬の節ばった男らしい指が俺の頬を触れた。


「た、かせ…?」


自分でも情けないほどか細い声が出てしまったと思う。だが今はそんなことを気にしている暇すらなく、俺の頬を優しく撫でる高瀬の指先に戸惑っていた。

ただ何かを喋るわけでもなく、高瀬は指先や手の平で俺の頬を優しく撫でる…。


「……ぁ、」


一体どうしたものなのかと高瀬の様子を伺ってみる。
…するとそこには鋭い目を細め、優しい笑みを浮かべている高瀬が居た。

俺は時々見せるこの“愛おしい物を見るような”高瀬の目は、…少し苦手だ。


…だって、


どうすればいいのか分からない。



…あぁ、どうしよう案の定高瀬の色気にやられて頭がクラクラしてきた。どんどん自分の頬が熱くなっていくのが分かる。
俺の頬を撫でる高瀬の指先が、時々俺の唇に触れる。
その感触さえも、キスされているような感覚に陥り、更に俺を混乱させていく。俺の頬や唇を撫でる高瀬の優しい手を拒否することなど出来ずに、俺はただひたすら高瀬を見続けた。

…すると高瀬はやっと口を開いた。



「……仁湖…?」

「な、に…、高瀬…?」


想像以上に甘く優しい、俺の名前を呼ぶ高瀬の声。
まるで砂糖菓子に浸かっているように甘くふわふわした気分になる。



「…キス、していいか?」



…あぁ、本当に一体どうしたものか。
こんな事をそんな優しい表情、声で言われればもう高瀬の事しか考えられないほど、俺の頭の中は高瀬で埋め尽くされる。



「馬鹿…。もう俺は、高瀬のものなんだから、

…好きにしていいんだよ。」



だから許可は取らなくていい、と言おうと更に口を開こうとすれば、それより先に柔らかいソファに押し倒され、その言葉は声にする前に口付けで掻き消された。


「……ん、っ」

「に、…こ…、」

「高瀬ぇ……」


チュッ、チュッ、と優しく触れるだけの啄ばむキスをしてくれたと思いきや、高瀬は今度は生温い舌を俺の口の中に忍ばせてきた。
思わず高瀬の舌を噛みそうになれば、それより先に高瀬が俺の舌を器用に絡め取る。チュク、クチュ…と唾液の混ざり合う音に余計に羞恥と興奮が高まる。


「…は、ァ…っ」


飲みきれずなかったどちらのものか分からない唾液が、口端から零れる。
みっともないと思う暇すらなく、俺は高瀬との濃厚な口付けに理性を奪われていた。

俺の上に跨っている高瀬の背中に腕を回し、ギュッと力強く服を握った。
そうすれば高瀬は、俺の口の中から舌を抜き取った後、高瀬は俺の額に唇を落としてくれる。



「…落ちないように、捕まってろ。」

「………ん、」


高瀬との口付けだけで腰が砕けてしまった俺は、唯一力の入る腕を、横抱きをしてくれた高瀬の首に回した。

……行き先は分かる。
これからのことを想像すれば、それだけで心臓が煩く鼓動する。決して軽くはないだろう俺の身体を軽々と横抱きした高瀬は、一つの扉を開けた。


寝室だ。


見慣れたベッドを見て、俺は口の中に溜った唾液をゴクリと音を鳴らして飲み込んだ。




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