「…………」
「…………」
「………っ…、」
振り返ること一週間前…。
俺と高瀬が授業中抜け出して、屋上に行ったときのことだ。
「葵」と高瀬を名前で呼ぶことで、俺は改めて高瀬への愛情を再確認出来た。俺は本当に高瀬が好きだ。…愛してる。
上手く言葉ではこの愛情の深さを表せられないけれど、誰よりも高瀬のことを大切だと思っている。
そんな俺は、屋上で高瀬にこう告げたんだ。
『今度、高瀬の家に…、
…行ってもいい?』
…と。
俺からこうして高瀬の家に行きたいと申し出たのは、ほんの数回しかない。
恋人同士ならきっと俺の告げた意味が分かると思う。
単に家に行くだけではなく、
…もっと深い意味があるということを……。
そして話は現在に戻る。
「…………、」
「……」
現在俺は高瀬の家に居る。
…今日は金曜日。授業が終わった放課後俺は高瀬に「俺の家に来い」と有無を言わさぬ低い声で告げられた。
高瀬の家に来れたのはいいが、…久しぶりに俺と高瀬の間では沈黙が続いています。
だ、だって、俺は一週間前にあんなことを言ったんだ…っ。今思っても、俺は大胆なことを口走ってしまったと思っている。
…べ、別に後悔はしてないけどさ…。
後悔はしていないけど、かなり緊張をしている。
……何て話掛ければいいのか分からない。どういう態度を取ればいいのか分からない。
「…………っ、」
一方の高瀬も、高そうなソファに座っている俺の隣に腰を掛けたまま動きもしないし、喋りもしない。
…こういうときってどうすればいいのか分からない。
普通の恋人はどういう経緯で、初エッチをするんだ?
…いやいや、ちょっと待て!
…も、もしかしたら高瀬はそういうことをするためではなく、ただ単純に俺を家に呼んだだけかもしれないよな…っ。
お、俺は何を一人で慌てているのだろうか…。
そりゃ、高瀬のこと好きだから、心だけではなく身体だって俺だけのものになって欲しいと思っている。
……だけど、これは俺の願望であって、高瀬も俺と同じように思ってくれているとは限らない。
ちょっと先走り過ぎていたのかもしれない…。
俺は隣に居る高瀬の様子を伺うために、こっそりと高瀬の顔を覗き込んだ。
「………ぁ、…」
すると、バチっと視線がぶつかった。
「…あ、ぃや、…えっと、その…、」
もちろんのこと、俺は慌てた。
…目が合っただけでこんなに慌ててたら、意識していたことが高瀬には伝わってしまっただろう。
俺は改めて恥ずかしさを感じて、膝の上で握り拳を作り身体を丸めて縮こまった。
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