お預けワンコ







「…は、発情って…、」


まるで自分を動物に例えたような言い方だ。
…まぁ、ある意味合っているのだろう。
俺を見下ろす高瀬の目はギラついていて、若干理性を失いかけているように見える。

だ、だけど「葵」って呼べと最初に言ったのは高瀬だろ…っ。
そんなことを今更言われたって、俺はどうすれば…。



「…あ、ちょ、…こら…っ」



そして高瀬は俺を押し倒したまま、首元に顔を埋めると再び印を付けるためなのか皮膚に吸い付いてきた。




「…は、…だって、仁湖が煽るから…っ」

「お、俺は別に煽ってなんか…ン、…」

「煽ってる。俺の名前を呼ぶときの可愛さとか、…すげぇ堪らなかった。」

「…あ、…ン、ゃ…、」



耳元でピチャピチャという、いやらしい音が聞こえてくる。先程の衝撃事実で萎えていたペニスが、徐々に膨らんでくるのが分かる。



「だ、駄目…っ」

「…仁湖、……は…、」


高瀬は俺の制止の声を聞いてくれない。
しかも首元に吸い付いて印を付けるだけでは飽き足らず、今度は俺のシャツを捲り上げて胸元を大きな手の平で弄ってきた。

さすがにこれは駄目だ。
皆は授業中だといえど、ここは学校なのだ。
公共施設。




「高瀬、駄目…っ、あ、…ン、こら…、待て!」

「………、わん……」



聞き分けのない犬を叱るような口調で言えば、高瀬は可愛らしく「わん」と言って動きを止めた。
…今の高瀬には垂れた耳と、寂しそうにパタパタ動く尻尾が見えてしまう…。
少し可哀想だと思ってしまう自分が居ることは確かだ。

だけどこの行為を許してしまっては駄目だ。
……そ、そりゃ、高瀬に求められてるって思えて嬉しいけどさ、…そんな見境もなく盛られても受け入れられないよ…。




「…あ、あのさ?」

「……何だよ…?」


少しムスッとしている高瀬。
どうやら怒っているのではなく、拗ねているご様子。
逞しい身体、精巧な顔付きをしていても、やはりこういうところは普通の高校生男子。



「名前、呼びたいけど……、もっと大事なときのために取っておくことにする。」

「大事なとき…?」

「え、…あ、えーっと、それは…、」


こうして訊かれると返事に困る。
例えば、「ベッドの上」とか軽々しく言える度胸もなければ柄でもない。



「と、とりあえず、…今の所はよ、呼ばないから…っ、」

「…分かった。」

「よ、よし。じゃぁ、とりあえず授業に戻ろうか。」

「……仁湖と二人で居たい。」

「…それは、駄目。」



それは俺も一緒だ。
もっと高瀬と二人きりで居たいとも思うけど、ここの所二人とも授業どころか学校を休みがちなんだから、まともに受けないと駄目だ。





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