「…わ、忘れて…」
「嫌だ。」
何で俺はあんな卑猥でみっともない行動を取ってしまったのだろうか…?
冷静である今の状態であれば、絶対にしない。
…だけど今更後悔しても遅い。
後悔先に立たずとはこのことだ…。
「わ、忘れてくれよ…」
「…あんな可愛い行動を、俺が忘れるわけねぇだろ。」
「…………っ、」
「美味そうに俺の銜えてたよな。」
「ち、違…!」
ま、まさかそんなにはっきりと見られていたとは…。
別に美味しそうに銜えてたわけではないけど、高瀬のものを銜えていると思うと、凄く興奮していたことを覚えている。
「も、もう忘れなくていいから、俺の前ではその話はしないで…、」
「嫌。」
「……何でだよ…?」
「だって恥ずかしがる仁湖が、可愛い…」
「ば、馬鹿……っ」
…どうしよう。
きっと意地悪な高瀬のことだ。
このネタで苛めてからかってくるに違いない。
「…俺に忘れて欲しいのか?」
「出来れば……」
…というか、今すぐ忘れて欲しい。
欲を言うならば、過去に戻ってやり直したいくらいなのに…。
「だったら、俺の名前もう一度呼んで…。」
「………え?」
「ずっとじゃなくていい。一回でいいから、俺の目を見て呼んで欲しい。」
「…………。」
こうして振り出しに戻るのか。
…べ、別に高瀬の名前を呼ぶのは嫌じゃないよ?
嫌じゃないけど、…こ、心の準備というかなんというか…。
恥ずかしくてそう簡単に言えるものではない。
でも、…俺が高瀬の名前を呼べば高瀬が喜んでくれるんだよな?
もっと高瀬を喜ばせたい。
「わ、分かった…っ」
「…仁湖、」
二つ返事とは程遠いのだが、俺は高瀬の要望を受け入れた。そうすればあまり表情を変えない高瀬の表情が柔らかくなったのが分かった。
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