「…ちょ、た、高瀬、…本当に駄目だって…っ」
「ほら、見えるか?綺麗に痕が付いてるだろ…?」
「ン、…ちょ、も…ゃ…」
高瀬は止めるどころか、首元や胸元に付けたキスマークをこれ見よがしに見せ付けてくる。
幾つもの赤い印が俺の身体に散らばっているのが見えて、余計に下半身が反応するのが分かる。
「…た、高瀬ってば…、」
「…………」
「も、止めろよ…高瀬…っ」
「……名前で呼んでくれれば、止めてやるよ。」
「……へ?」
「俺の名前、
……呼べよ。」
鋭く力強い高瀬の目が俺に向けられている。
その様子から、本気で言っていることが伺えられる。
“名前”って、…高瀬の名前?
「葵」。もちろん何度か呼んだことはある。
だけどそれは高瀬が寝ているときとか、誰も居ない部屋でこっそりと呟く程度だ。
本人目の前に、名前を呼ぶなんて恥ずかし過ぎる。
し、しかも俺はつい最近、熱で寝込んでいる高瀬のペニスを銜えながら、「葵」と呼んだ真新しい記憶があるほどだ。
…呼べるわけない。
「…む、無理…、」
「……何で?」
「だって…」
凄い恥ずかしい…。
高瀬の意識がないところであれば、何度だって呼べる自信はあるが、本人目の前で言える自信は俺にはない。
しかも今の俺の状態は、凄く不安定だ。
早くトイレに行って処理しないと、俺は高瀬の膝の上に乗ったまま下着の中で達してしまいそうだ。
「と、とりあえず無理なものは無理なんだよ…」
「…………」
「…だから、お願いだから、…は、離して…っ」
「……俺のもの銜えながら呼んでたくせに、無理はねぇだろ。」
「………ぇ…?」
バタバタと暴れていた俺だが、高瀬の台詞に俺は抵抗を止めた。
え?…あれ?
た、高瀬は今何て言った?
「…それとも、もう一度俺のものを銜えたら、呼んでくれるのか?」
「………っ、」
一瞬にして血の気の引いた。
あまりの驚きとショックで、勃起していたペニスが、萎えたくらい衝撃的だった。
「う、…嘘だ…」
「…………?」
「…お、起きてたのかよ、…あの時…」
お願いだから嘘だと言ってくれ。
熱に侵され意識を失っていた高瀬のペニスを勝手に銜えてたこと、そして高瀬の名前を呼んでいたこと。
…起きていたことは嘘だと言ってくれ。
「……仁湖、凄い可愛かったぜ…」
「……っ、」
嬉しそうに口角を上げて、高瀬は俺の身体をギュッと抱きしめる。
どうやら寝込みを襲ったことを怒っていないようだが、それとこれとは話が違う。
「…お、俺、…今凄く穴に入りたい。」
「駄目。大人しく俺に抱き締められてろ。」
「……恥ずかしさで、死にそう。」
「死なせない。」
過去の自分の行動に、ここまで後悔したのは初めてだ。しかし高瀬も意地が悪い。
起きてたなら、言ってくれれば良かったのに。
…いや、その場で声を掛けられた方が、羞恥は増していたのかもしれない。
どちらにせよ、高瀬が悪いのではなく、勝手な行動を取った俺が悪いということだ。
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