ラリホーの呪文








「寝なよ、高瀬。…ほら、ベッドに横になって…。」

「やだ。」

「は?」


…というか、そんな格好いい顔して「やだ。」とか言うなよ。
くそ、可愛いと思ったら負けだ…っ。



「何で嫌なんだ?」

「…………」

「寝ないと辛いだろ?」

「………膝…、」

「え?膝?」

「…膝枕……」

「……えっと、」


膝枕……、ってことは俺の膝で寝たいって事?
……何?何で今日の高瀬はこんなに可愛いの?
何かいつもと様子がおかしいような…っ。



「…っ、もしかして…、」


……そこで俺の疑問は、ある事への確信に変わった。




それは…、



「熱……」


そう確信した俺は、高瀬の額に手を当てる。


「……あ、あつ…、」

やはり当たっていたようだ。
高瀬の額はとても熱く、少し汗ばんでいた。


「ば、馬鹿。熱出してまで…、早く寝ろ。」

「……膝枕…、」

「分かった、…分かったから。それは高瀬が元気になったら何回でもしてやる。だから今は、早く寝ろって。」

「…仁湖、」


そういえば最初から何処かおかしかった。
いつもより熱っぽくてたどたどしい口調。
そして子供のように、何処か頑固なところもあった。

…高瀬を無理矢理ベッドに寝かし付ける。
頬は上気して息も乱れている。
とても苦しそうだ。


…早く気付かなかった俺がいけないんだ。



「…大丈夫?」

「……仁湖、膝枕…」

「元気になったらしてやるから。…早く元気になって。」

「…仁湖、苦しそうだ……」

「……それは高瀬の方だろ。」


自分の愚かさに眉間に皺を寄せていると、高瀬に心配されてしまった。
…そうだ、今は俺がしっかりしないと。
俺はそう思って、濡れたタオルで身体を拭くために、寝室から出ようと立ち上がると、



…腕を高瀬の妙に熱い手で掴まれた。





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