「…へ、変態高瀬…!」
「…でも、仁湖も気持ち良さそうに喘いでた…。」
「う、煩い!そ、…そんなの俺の意思じゃない…っ」
「でも喘いでた。」
「………っ、」
……俺の意識のない時のことを言われたって、どうしようもない。…というか、高瀬の言っていることは本当なのだろうか?俺、本当に口でされて喘いでいたのか?気を失っていたのに?
…し、信じられない。
「わ、忘れろ…っ、」
「やだ。」
「……な、何で…?」
「…あんな仁湖の可愛い姿、…忘れられねぇよ。」
「ば、馬鹿…!」
ほんのりと頬を赤く染めてそう言う高瀬に、俺も恥ずかしくて頬が熱くなるのが分かった。
「…も、もう…!」
「……怒ったか?」
先程の嬉しそうな表情から一変して、高瀬はまるで捨てられた子犬のような寂しげな表情をしている。
「……ぅ、」
そんな姿を見せられると、怒れない…。
も、もしかして俺がそうなるのを分かって、高瀬はしているんじゃないか…?
……いやいや、高瀬はそんな計算して行動する男ではないはず…。
…もうここは俺が折れないと、どうしようもないよな…。
「…もう二度としないなら、…今回は怒らない。」
「仁湖…、」
「だから二度とするなよ。」
「…………」
「…返事。」
「……分かった。」
渋々とだが返事をする高瀬に、俺は満足気に頷く。
…よし。もうこれでこのことは忘れよう。
そうだ、忘れることで人は成長していくのだから…。
「そうだ。」
「…ん?」
「……高瀬ちゃんと寝た?」
俺が意識を失ったのは何時だが分からないが、…結構時間が遅かったはず。
…それから高瀬は俺を風呂に入れてくれたってことは…、深夜は過ぎているよな?
「…寝た?」
「………あぁ。」
「嘘。」
「…嘘じゃない。」
「…嘘吐くとき、高瀬は俺と目線合わせてくれないもん。」
「…………、」
「本当は何時に寝たの?」
嘘を見破ると、高瀬は眉間に数本の皺を寄せて、苦虫を噛み潰したような表情をする。
「…何時?」
「…………一時間。」
「は?」
しつこく訊くと、高瀬は渋々ながらも教えてくれた。
……しかも一時間しか寝ていないと。
…馬鹿、もう信じられない。
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