たまには誘ってみてもいいですか?







「わ、…忘れろ…っ」

「……へ?」

「い、今言ったことはすぐ忘れろ…」

「何で…?」

「は、恥ずいだろうが…っ」


い、今更何を恥ずかしがるのだろうか…。
そりゃ俺も聞いてて恥ずかしかったけど、高瀬はもっともっと恥ずかしい台詞を言っているし、恥ずかしいことをされているのだから、そこまで照れる意味はないと思うけど…。


「忘れない。」

「……おい、仁湖…、」

「絶対忘れないから。」

「………っ、」

「だって、こんな嬉しいこと忘れられるわけないよ。」

「ば、…馬鹿野郎…。」

「…覚えてて、いいでしょ?」

「…か、…勝手にしろ。」

「うん。勝手にする。」


先に折れたのは高瀬だ。
きっと俺が意思を変えないと思ったのだろう。高瀬は顔を背けながらも、許してくれた。


「ありがとう、高瀬。」

「……べ、別に、」


あぁー、もう何で高瀬はこんなに可愛いんだろう…っ。照れているのかいつもより無愛想なのだが、ちゃんと返事してくれる高瀬に、俺の胸は高鳴ってしまう。
俺よりも高い位置にある高瀬の頭に俺は手を伸ばす。そしてクシャクシャと掻き混ぜるように髪の毛を撫でれば、高瀬は「…や、止めろ」と言うのだが、俺の手を振り払うことはなかった。


「…あ、あのさ…高瀬、」

「……何だよ?」

「そのさ、…高瀬が良ければなんだけど…、」

「………?」

「その、…じゅ、授業サボらない…?」


俺がそう訊ねると、高瀬は俺に視線を戻す。
きっと俺らしくないことを言ったから驚いているのだろう。…俺だってまさか自分からこんなことを言う日がくるとは思わなかった。


「…あ、いや、…その、高瀬が嫌だったら、全然いいんだけど…、」

「…………サボる。」

「え?」

「…俺の家、来るか?」

「……いいの?」

「いいも何も、俺も思っていた。」


おいで、と大きな手を差し伸ばされた俺は、羞恥に戸惑いながらも、高瀬のその手を握り返した。


「………エッチなことしないって約束するなら、……行く。」

「…なるべく善処する。」


なるべくかよ、と思いながらも、俺は高瀬の手を握ったまま手を離すことはなかった。





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