「…うん、何か俺も凄く恥ずかしいこと聞いた気がする…」
「掘り返すなよ…。」
「ご、ごめん。」
高瀬が俺の肩に顔を埋めていてくれて良かった。
…そうでないと、きっと今の俺のみっともない顔を見られていたと思うから。
顔を真っ赤にして、嬉しさでニヤけている俺の顔は、きっと見れたものではないだろう。
「…高瀬ありがとう。」
「…何が?」
「そ、の…、俺のこと好きになってくれて…。」
高瀬と出会うまで、俺の人生は“平凡”そのものだった。これが普通だと思ったし、平凡な人生に何一つ不自由していなかった。
…だけど高瀬と出会ってから、俺の人生はガラリと変わった。毎日楽しくて仕様がない。平凡だった毎日と違って、一日が短いと思ってしまうくらいだし、一日が終わって欲しくなかった。
「それは俺の台詞だろ?」
「……高瀬の?」
「あぁ、ずっと仁湖のこと遠くで見ているだけだったから、…こうして仁湖と話せて触れて、キス出来て、すげぇ嬉しい。」
「…………っ」
な、何で高瀬はこうも恥ずかしい台詞をサラリと言うんだろう。…こんな嬉しいこと言われちゃうと、心臓が壊れそうなくらいドクンドクン、っていっているんだけど…。
……っていうか、あれ?サラリと聞き逃しそうになったけど、高瀬は今何て言った?
「“ずっと遠くで見てた”って何?」
それってどういう意味?
俺たちが出会ったのって、新学期のときだよな?出会いは隣の席のときだったから、別に遠くはないと思うんだけど…。
高瀬に訊ねると、俺の肩に顔を埋めていた高瀬は、急にガバッと顔を上げて、俺から勢いよく離れた。
「…いや、それは…、」
「高瀬どうしたの?」
「…な、何でもねぇよ。」
「……?」
何でもないのなら、何をそんなに慌てているのだろう?もしかしたら何か深い意味があるのだろうか?
…そうだ。きっとそうだ。高瀬は俺に何かを隠しているんだな。直感でそう思った俺は、もう一度高瀬に訊ねてみた。
「“遠くで見てた”って何?どういう意味?」
「………っ」
「…俺には言えないこと?」
「い、言えないことじゃねぇけど、…っ、本当は二年になる前から、仁湖のことを好きだったなんて、…恥ずかしくて言えるわけねぇだろうが…っ………って、…あ…っ」
そして高瀬は全てのことを言って、墓穴を掘ってしまったことを気付いたのだろう…。
赤かった頬を更に赤くして、終いには耳まで真っ赤になっていた。
そして俺も、高瀬の言葉の意味をワンテンポ遅れて気付いて、高瀬に負けずと体温を上昇させていた。
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