愛情よりも更に上の感情








「お、俺もさ、…高瀬のこと大好きだよ…?」


きっと高瀬が俺のことを思ってくれていることに、負けないくらい俺は高瀬のことが好きだ。
こんなに人のことを好きになったのは初めてだから、上手くそのことが伝えられないけれど、高瀬が好きなことは変わらない。


「素直になれないことが多いけど、…それは恥ずかしいからで、…こんな機会じゃないと言えないから、何度だって言うけど、…俺は高瀬のことが大好……っ、んっ?!」


高瀬のことが大好き、と最後まで言い終わることなく、俺の口は塞がれてしまった。

…高瀬の熱い口付けで…。


「ン、…ぅ、ふぁ」

「…っ、仁湖……」

「た、…か、せ、ンっ」


余裕のなさそうな高瀬の強引で乱暴な口付け。
いつも優しくて蕩けそうな口付けしかしない高瀬には、珍しいキスだ。


「ぁ、っ…ンぅ」


ヌルリとした高瀬の熱い舌が俺の口の中に入ってくる。そして高瀬は俺の舌を絡め取ると、本当に余裕がなさそうに強引に舌を動かしてくる。
そんな高瀬の激しい口付けに、俺も余裕がない。
高瀬に腰を支えてもらっていないと、このまま尻から崩れ落ちてしまいそうだ。
それほど高瀬とのキスは気持ち良過ぎるのだ。


「ふぁ、あ…ン、っ」

「……は…っ、にこ…、」

「ん、ぅ…あ…っ、ふァあ」


口の中に性感帯があるなんてことは、高瀬とのキスで初めて知った。きっと俺よりも高瀬の方が、“俺の良い所”を知っているはずだ。そこを刺激されれば、俺は抵抗することなど出来ずに、ただ高瀬とのキスを味わうしかない。

歯列を舌で舐められ、上顎を尖がった舌先で刺激される。…それだけのことなのに、俺の口からはくぐもった変な声が出てしまう。


深い口付けに息の仕方すら忘れてしまいそうだ。
その証拠に俺は上手く息が出来ずに、苦しくなってきた。上手く力の入らない手で高瀬の胸板をドンドンっと叩いて、それを主張すれば、高瀬は名残惜しそうに俺の口から舌を抜き取った。


「……ンっ」


俺の舌先と高瀬の舌先の間には、どちらともつかない銀色の唾液の糸が引く。ある程度距離と時間が経てば、プツリと切れてしまったのだが、そんなことすらも何だか凄く卑猥に思えてしまう。

息苦しさと恥ずかしさに、顔を真っ赤にしていると、急に高瀬に抱き締められた。



「…た、…高瀬…?」

「………やばい、」

「へ…?」


ふわりと香ってきた高瀬の体臭と香水のいい匂いに、クラリとしながら強引な抱擁に更に顔を熱くさせていると、突然高瀬が意味深なことを喋る。



「…やばい、って何が?」

「仁湖が……、」

「俺…?」

「…だから、仁湖が可愛過ぎて、好き過ぎてやばい…っ」

「え?…な、何それ?ど、どういう意味…だよ?」


高瀬の言葉の意味を訊ねると、高瀬は不意に俺の首元に顔を埋めると、チュッと音を立てて俺の皮膚に吸い付いてきた。

多分“キスマーク”を付けられたんだと思う。
何度もチュッ、チュッと音を立てながら吸い付いてくる高瀬に俺は戸惑う。



「…俺は仁湖と付き合う前は、これ以上ないくらいまで仁湖のことが好きだった。」

「う、うん…。」

「これ以上なんてないと思ってたのに、付き合ってから更に仁湖のことが好き過ぎて、自分が上手く抑えられねぇし、…まるで中毒に掛かってしまったかのように、仁湖のことしか考えられねぇ…。」

「高瀬…、それって…、」

「だから愛情よりも、もっと上の感情を仁湖に抱いてるってことだよ…。」


恥ずかしいから全部言わせるな…、と高瀬は蚊の鳴くような小さい声で囁くと、俺を更に強く抱き締めてくれた。




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