嵐の前のなんとやら









「……………」







「……………」









「……………」









何、これ?





凄い気まずいんですけど。








ち、沈黙のほうは別にいいよ。




だって別に喋ることないし、俺と高瀬が普通に会話することの方が可笑しいけど、








けどさ、











何で、高瀬は俺の顔をジーっと見てるわけ?











「…………っ」






俺は膝の上に握りこぶしを作って、ずっと俯いていた。










先程まで担任の話を聞かずにガヤガヤと煩かったクラスメイトも、俺達の不穏な空気を感じ取ったのか誰も喋ろうともしない。









やっぱりさっきの“葵ちゃん”を怒っているのかな?






…まぁ、怒るのが普通だよな。



誰だって初対面の奴から、いきなりちゃん付けで呼ばれて気を良くする男なんて居ない。





俺だってちゃん付けで呼ばれたら、凄いむかつく。



しかも俺の名前が仁湖(にこ)なだけに、ちゃんなんか付けたら、『にこちゃん』になってしまう。




過去に『にこちゃん』だの『にこちゃんマーク』だのからかわれたときは、まじで怒ったこともある。










「……………」








「……………」








だけど高瀬は何で何も言わずに俺を見ているんだ?






逆に怒鳴られり殴られたほうが、まだマシなんですけど…。












……いや、それはそれで怖いから嫌だけど。







こんな体格のいい男から殴られたんじゃ、俺は多分一発で気絶ものだろう。








しかも、くりょう学園のトップだぜ?





三年よりも、誰よりも喧嘩の強い男から殴られたんじゃ気絶ではすまないかも…。










びょ、病院行き決定かもな…。




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