「……………」
「……………」
「……………」
何、これ?
凄い気まずいんですけど。
ち、沈黙のほうは別にいいよ。
だって別に喋ることないし、俺と高瀬が普通に会話することの方が可笑しいけど、
けどさ、
何で、高瀬は俺の顔をジーっと見てるわけ?
「…………っ」
俺は膝の上に握りこぶしを作って、ずっと俯いていた。
先程まで担任の話を聞かずにガヤガヤと煩かったクラスメイトも、俺達の不穏な空気を感じ取ったのか誰も喋ろうともしない。
やっぱりさっきの“葵ちゃん”を怒っているのかな?
…まぁ、怒るのが普通だよな。
誰だって初対面の奴から、いきなりちゃん付けで呼ばれて気を良くする男なんて居ない。
俺だってちゃん付けで呼ばれたら、凄いむかつく。
しかも俺の名前が仁湖(にこ)なだけに、ちゃんなんか付けたら、『にこちゃん』になってしまう。
過去に『にこちゃん』だの『にこちゃんマーク』だのからかわれたときは、まじで怒ったこともある。
「……………」
「……………」
だけど高瀬は何で何も言わずに俺を見ているんだ?
逆に怒鳴られり殴られたほうが、まだマシなんですけど…。
……いや、それはそれで怖いから嫌だけど。
こんな体格のいい男から殴られたんじゃ、俺は多分一発で気絶ものだろう。
しかも、くりょう学園のトップだぜ?
三年よりも、誰よりも喧嘩の強い男から殴られたんじゃ気絶ではすまないかも…。
びょ、病院行き決定かもな…。
4/300