性の授業







「…た、高瀬?」


「…今までは、何度も逃げられたが…、もう逃がさねぇ。」



……あ、…またあの目だ。
ギラギラしていて、今にも喰いついてきそうな獣の目。…いや、雄の目付きと言ったほうが正しいのだろうか?

恐怖と、そしてほんの少しの期待に、俺はゴクリと喉元を鳴らした。




「に、…逃げないよ。もう、高瀬から逃げないことに決めたから…。」


大丈夫。少し俺を見る目付きが変わっただけで、中身はいつもの優しい高瀬だ。何も恐がる必要もないし、逃げる必要もない。
俺は少しだけ逃げたい衝動に駆られてしまい、そうやって自分を言い聞かせる。




「その、…す、すまた、ってやつをするのか?」


「…それは追々な。今はもっと仁湖に触りたい。」


「た、かせ、…んっ、…ゃ、」


そう言って高瀬は俺の手の平に絡みつくように、自分の手の平を重ねてきた。指と指を絡み合わせ、まるで恋人繋ぎのようにされ、俺の両手は動かせなくなった。
そして段々と顔を近づかせて、チュッとわざとらしい音を立てながら、俺の唇に軽くキスをする。



「ふ…ぁ、…ンっ」


最初は触れるだけのキスの嵐を降らせるだけだったのだが、…やはりそれだけでは満足いかなかったのか、高瀬は俺の口内にヌルリとした舌を忍び込ませてきた。


「んぁ、っ、…ふ…」


舌を絡め取られ、上顎をツー…と舌でなぞられる。
仕舞いには歯列まで舌でなぞられ、何ともいえない感覚に、ブルリと身体を震わせると、高瀬が嬉しそうに笑ったのが雰囲気で分かった。



「や、…ン、っ、ふぅ…」



…息が出来なくて苦しい。苦しいけれど、手も口も塞がれているため、抵抗することが出来ない。
目をギュッと瞑って、高瀬の舌の動きに合わせて、余裕が出来たときだけ口から息をする。



「ん、く、…ふ…ン、っ」


そしてもう限界だと、目元に涙が溜ってきた頃合に、高瀬は俺の口内から舌を抜き取り、口を離してくれた。
舌を抜く際に、俺の舌と高瀬の舌を繋ぐように、銀色の糸が引いているのが見えて、凄く卑猥なことをしてしまったと感じてしまう。




「…っ、…はぁ…、はぁ…」


「大丈夫か?」


「…な、なんとか…」



俺はハァハァと息を乱しながら、新鮮な空気を急いで吸い込む。
それに比べて高瀬は息一つ乱しておらず、苦しそうに忙しなく空気を吸い込む俺の頭を優しく撫でてくれた。




「これで終わりじゃねぇぞ。…分かってるよな?」


「う、…うん。大丈夫…」


いや、決して大丈夫ではないのだが、俺は高瀬から逃げないと決めたんだ。
例えどんなことをされようとも、俺は高瀬の問いに「大丈夫」と答える。




「何をするんだ…?」


未知の体験。何をされるのか、今からどんなことをしなくてはならないのか、俺に出来ることなのか、…不安に押し潰されそうな俺の声は、若干震えている。



「仁湖は何もしなくていい。…ただ俺にされることに素直に反応しろ。」


「…俺、何もしなくていいのか?」


「あぁ、今はな。…慣れてきたら、仁湖にもしてもらいたいが、…今日の所は俺で感じていろ。」



と、とりあえず今日は何もしなくていいようだ。良かった…。いきなり難しいことを言われても、俺に出来そうにないからな…。
今からされることに、ただ素直に従えばいいってことだよな?
大丈夫。それくらいなら何とか俺でも出来るはず…。






「……仁湖…。」


まるで愛を囁くような低くて甘い声で俺の名前を耳元で囁くと、高瀬は俺の首元に顔を埋めてきた。



「……ン…、」


高瀬はそのまま俺の首筋に口を寄せると、チュッと音を立てて吸い付いてきた。ほんの少しチクッとした痛みが訪れるのだが、これくらいはまだ大丈夫。



「……あ、…っ、ちょ、…たかせ…?!」


大丈夫だと思った瞬間に、俺は次の高瀬の行動に慌てふためく。高瀬は俺の首元に顔を埋めて、チュッ、チュッと何度も吸い付き、そして舌を這わせながらも、俺の着ているシャツのボタンを一つ一つ脱がしているのだから…。




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