「…………。」
「…………。」
「………えっと、」
目当ての答をインターネットで導き出した俺は、その日の夜に、後日会えないかと高瀬に電話で連絡をした。
やはり腹に蹴りを入れてしまった所為か、高瀬は少し不機嫌そうに「あぁ…。」と承諾してくれたのだが、
「………っ」
「…………」
正直沈黙に耐え切れそうにありません…っ。
よくよく考えてみると、俺と高瀬って沈黙率が結構高い気がする。付き合ってからはそこまでなかったのだが(沈黙になる前に、よく高瀬がキスをしてくるから)、やはり無言というのは正直辛い。
「た、高瀬、…この前はごめん。」
「何が?」
「だ、だからさ、…腹、蹴ったこと…。怒ってるだろ?」
「………別に。」
えぇぇっ…。
何、その無愛想な態度。やはり高瀬は俺に怒っているようだ。
そりゃそうだよな。俺みたいな平凡野郎に、蹴りを入れられたんだから。くりょう学園のトップの高瀬が怒らないわけないじゃないか…。
「…えっと、本当にごめん。」
「別に、俺は蹴られたことを怒ってるんじゃねぇよ。」
「え?…じゃぁ、何で…?」
「仁湖が俺から逃げたことが気に喰わねぇ…。」
「…………あ、」
どうやら高瀬は俺に蹴られたことより、俺が逃げてしまったことに腹を立てている、…というより拗ねているようだ。
「ごめん、高瀬、…その、俺、…あんまりキスとか、そういうの慣れてなくて、」
「…もう、俺から逃げないか?」
「う、うん。逃げない。」
「絶対?」
「うん。…約束。絶対逃げない。大丈夫。」
そして高瀬は、俺が嘘を吐いていないということを分かってくれたのか、「怒って悪かった。」と言って、俺の頭を優しく撫でてくれた。
……やはり高瀬は優し過ぎる。最初から最後まで、全部俺の方が悪いし、我侭な態度を取っているというのに、高瀬が謝るだなんて…。
高瀬は謝る必要なんかないというのに…。
「あ、あのさ…!」
「ん?」
「俺さ、…その、高瀬と釣り合うように、勉強してきたんだ。」
「勉強?」
「うん。…高瀬が言っていた、“キスより先のこと”を勉強してきた。」
「あ゛?」
俺は高瀬が喜んでくれると思って、調べてきたのだが、高瀬の反応は喜ぶというより、…どうやら怒っているように見える。
あ、あれ?何でだ?
「た、…高瀬?」
「…誰から聞いた?」
「え?…あ、いや、誰からとかそういうのじゃなくて、」
「……男か?」
「いや、だからさ、」
「それとも女か?」
「いや、ちょっと俺の話聞いてよ。」
高瀬は何を怒っているんだ?
…というか、何でこんなに俺達の話は噛み合っていないんだ?
「男か?女か?…誰に聞いたんだよ?」
「…だからさ、男とか女じゃなくて、…その、」
「言えよ。…そいつぶっ殺す。」
ぶ、物騒なこと何を言っているんだ高瀬は…?!
「俺が、…仁湖に教えようと思ってたのに、」
「高瀬、…あの、だから、」
「むかつく…。」
そうえいばこの前から高瀬は、俺にキス以上のことを教えたがっていたような…。
インターネットで調べたのだが、それを高瀬は男か女からか俺が聞いたと思っているから、怒っているようだ。
え?これって、もしかして…、
“嫉妬”とかいうやつなのだろうか?
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