そう。
俺は、「俺の気持ちを知っていたくせに、先に告白をしたこと」に怒っているのだ。
この日のために俺はずっと作戦を練っていた。
言おうとしていた言葉も。
どういうタイミングで言い出すのかも。
緊張と振られる恐怖で中々言い出せなかったけれど、ずっと高瀬のことだけを考えて作戦を立てていたのだ。
「…順番なんか関係ねぇだろ?」
「………え?」
「それとも仁湖から言わないと、俺への気持ちが変わるのか?」
「……あ…、」
高瀬の言葉を聞いて俺はハッと我に返った。
…そうだ。俺何をつまらないことでムキになってたんだろう?
順番なんか関係ないよな。
例え俺から伝えようが、高瀬から伝えようが、思いが一緒なことは変わらない。
つまらないことに気を取られて、大事なことを忘れていた。
「…ご、ごめん。高瀬、…俺、どうかしてた…。」
「いや、俺も仁湖が可愛くて苛め過ぎていた。悪い…。」
何だか我に返って改めて考えると、この状況って一体何なんだろう?
さっきは少し我を忘れていたから事の重大さに気付けなかったけど…、
もしかして、
今の状態って、
“両思い”?
そう思うと、更に顔が熱くなるのを感じた。
「……で?」
「え?…な、何…っ?!」
「俺、仁湖からの返事聞いてない。」
「あ……、」
返事…。しなくても分かっているというのに、今日の高瀬はとことん意地悪だ。顔を真っ赤にして照れている俺を見て、高瀬は嬉しそうに微笑んでいる。
そんな高瀬の嬉しそうな笑みを見ると、何だか余計に恥ずかしく感じるのは何故だろう…?
「俺は仁湖のことが好きだ。」
「…うん。」
「仁湖は?…俺のこと好きか?」
「……す……、す…、すき。」
「本当に?」
「う、…うん。」
何だよこれ…?
羞恥プレイ?
高瀬の言葉に繰り返して言葉を放つ俺は、さながら幼稚園児のようだ。
「どれくらい?」
「…へ?」
「どれくらい俺のこと好き?」
「…言わなくちゃ…、駄目?」
「駄目。」
幼稚園の先生のように優しく話しかけてくる高瀬に、俺は妙なくすぐったさを感じて、この恥ずかしさを高瀬にも味わって欲しくなった俺は、自分から手を繋ぐ。
繋いで分かる高瀬の体温は、先程手を繋いだときよりも断然熱くて心地よかった。
「凄く好き。言葉では表せないくらい好き。大好き。」
高瀬の手をギュっと握って、俺も負けじと笑顔を向ける。…きっとぎこちなくて情けない顔になっていると思うけど、こんなときくらい心から笑いたい。
「………っ」
「た、高瀬?」
「…それは反則だろうが…っ」
高瀬はそう言うと、俺からバッと視線を逸らして俯く。横から見える高瀬の頬は凄く赤かった。
それを見た俺も更に体温を上昇させて、耳まで真っ赤に染める。
今頃気付いた自分のストレートな告白に、凄く羞恥を感じる。
大の男が教室に二人きりで、頬を染め合って何をしているんだろう俺達は…?
とりあえず、もし誰かがこの場に来てしまったら、夕焼けのせいにしようと思います…。
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