「…っ…ぅ」
や、やばい…っ。
何でこんなときに泣いてるんだよ、俺…。
絶対高瀬に変だと思われてしまう。こんなときに何で涙が出るんだよ…?!
“止まれ、止まれ”と思うほど、涙は勝手にポロポロと流れ出る。
「…ご、…ごめ、お、俺…、」
勝手に流れ出る大量の雫を、手の甲で拭おうとすると、……それより先に隣から大きな手が伸びてきた。
「っ、…た、高瀬…?!」
高瀬は人差し指の腹で俺の目元を優しく拭うと…、
…何故か急に、
抱きしめてきた…。
「た、高瀬、…な、何して…っ?!」
「…泣くな。」
物凄い力で抱きしめられて、椅子から落ちそうになる俺を高瀬は支えると、耳元で優しい言葉を掛けてくる。
「ご、…ごめん…、」
「泣き止めよ。…俺は好きな人の涙なんて見たくない。」
「……え?」
高瀬の言葉に俺の思考は止まった…。
あれ?
…今高瀬何て言った?
“好きな人”?
え?…えっ?
俺の聞き間違い、……だよな?
「………高瀬?」
涙をポロポロと流しながら、ポカンとした間抜けな表情をしている俺は、本当に見っとも無いだろう。
高瀬はそんな俺を見て、ふっ…と笑うと、俺を抱きしめたまま優しい手付きで頭を撫でてきた。
「…悪い。苛めすぎたな。」
「………?」
ど、どうしよう。この状況に上手くついていけない…。
「仁湖の困っている顔が可愛くて、…我慢できなくて苛めてしまった。」
「…た、高瀬…?」
「…仁湖。もう一度だけ言う。…聞き逃すなよ?」
高瀬はそう言うと、俺の耳たぶをカプリと唇で挟むと、はっきりした声でこう言った…。
「仁湖。お前が好きだ。
手放したくない。
…一生俺の傍に居てくれ。」
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