「……………。」
「……………」
「……………。」
昼休みも五時間目も六時間目も使ったというのに、告白の言葉が思いつかなかった…。時は俺を待ってくれることなく、非情にも今は放課後…。
今、この教室には俺と高瀬だけ。
いわゆる“二人きり”という状態だ。
「……………っ」
早く何かを喋らなくてはいけないというのは分かっているけど、極度の緊張で喉はカラカラ。声を出したくても出ないし、第一何と声を掛ければいいのか分からない。
あんなに意気込んでいたというのに、いざ告白をしようとなれば、こんな風に一歩を踏み出せない自分にむかついて仕様がない…。
せめて“好きだ”の一言でも言える勇気があればいいのに…。
告白したことで高瀬に嫌われて、これ以上側に居られないことを想像すると凄く怖い。
高瀬の隣に俺ではなくて、他の男や女の人が居るのを想像すると酷く苦しくなる。
全てがなくなるのを恐れて一歩を踏み出せないことよりも、この思いを高瀬に伝えないほうが怖いけれども、やはりあと一歩のところで告白を思いとどまってしまう自分が居る。
だけど…、
このまま引き下がるわけにはいかない。
ちゃんとこの思いを伝えないと…ッ。
「あ、…あのっ!」「…お、…おい…っ」
勇気を出して声を掛けると、…何と高瀬と声が被ってしまった…。
…さ、最悪…ッ。
「ご、…ごめん。な、何?」
「いや、…仁湖から言えよ。」
「いや、…俺は、その…た、大したことじゃないし…、高瀬からどうぞ。」
…本当は全然大したことだけど…。
タイミングを逃してしまった…っ。俺がウジウジしてたからだ…っ。大丈夫だよな?ま、まだチャンスはあるはず…。
「……えっと何、高瀬?」
「だ、…だから、…その…」
「………ん?」
高瀬は言いにくいのか、口篭る。
隣の席に居る俺の顔をチラリと見ると、何故か顔を真っ赤にしてすぐに顔を逸らした。
……ん?一体何なんだ…?
「…どうしたんだ高瀬?」
俺と高瀬の言葉が被ってから五分近くは経つ。
だが一向に高瀬は言葉を放たない。
何か悩みでもあるのだろうか?俺でよければ高瀬の役に立ちたい。
そう思った俺は高瀬に何があったのか訊ねる。
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