「え?えぇ?…ま、まさか本当に…、」
おもわず高瀬に流されてしまい、植木鉢の話を信じてしまったが、よく考えたら家の前に植木鉢なんてない。
…ということは高瀬は本当に俺の家の合鍵を持っているのか?
「も、もしかして本当に鍵持ってる…?」
「…………………持ってねぇって…。」
だからその間が気になるんだよ…っ。
こいつやっぱり持ってるんじゃないか?
ま、まさか冗談で言ったことが当たっていたとは、思いもしなかった。
それにしても、俺に何も言わずに勝手なことするとは…。
「ず、…ずるいよ。」
「…………は?」
「俺だって…、
………高瀬の家の合鍵欲しい…。」
ずるい。
……ずるいよ。
俺だって高瀬の家の合鍵欲しいなぁ…、とかこっそりと思っていたのに、まさか高瀬だけ勝手に作っているなんて、ずるい。
「お、…おま…、な、何言って…っ」
「俺に高瀬の合鍵ちょうだい。」
「…………っ」
自分の今の気持ちを隠さず、おもいきって高瀬に本音を告げると、高瀬は急に慌てだして、顔を真っ赤に染めた。
“何で真っ赤になるんだろう?”と思いながら、俺は高瀬に図々しくも何度も「合鍵ちょうだい。」と頼み込む。
「…………駄目?」
「だ、…駄目じゃねぇよ。」
「ほ、本当に?」
「あぁ。…仁湖なら、合鍵くらい何個だってくれてやる。」
そして高瀬は、「合鍵が出来るまで、少し待ってろ。」と言うと、俺の頭をポフポフと撫でてくれた。
「ありがとう、高瀬。俺、嬉しい。」
えへへ…、と嬉しさのあまり気の抜けるような笑みが出てしまったけど、そんなの気にしない。
だって今の俺は最高潮に機嫌がいいから。
まさか本当に貰えるとは…っ。言ってみるものだな。
「…なぁ、仁湖?」
「ん?何?」
「…怒ってねぇのかよ?」
「何を?」
「だから、…勝手に合鍵作ってたこと。」
高瀬は気まずそうにそう言った。
どうやら俺の知らないところで勝手に合鍵を作ったことに、俺が怒っているのではと心配しているみたいだ。
「怒ってないよ。」
「……本当か?」
「うん、…それに怒るどころか、嬉しかった。」
「…………?」
「だって、…このきっかけがあったから、その…高瀬の家の合鍵貰えることになったし…」
嬉しくて堪らなくて、えへへーとまたもやだらしなく頬の筋肉を緩めて、馬鹿丸出しの笑顔をする俺。
「……………っ」
「…へ?うわ…わっ?!」
笑っていてたら、俺の頭を撫でてくれていた高瀬の手が止まった。…そして何故か急に肩を掴まれて、
………ベッドに押し倒された。
「…へ?え…?な、何…?」
「……二人きりで、俺を煽る仁湖が悪い。
…もう我慢できねぇよ。」
そう言う高瀬の目は、何故かギラギラしていて少しドキっとした…。
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