えぇっ?!
確かに高瀬は、「今からそっちに行く」って言ったよな?
そっちってどっち?!
どっちって何処?!
や、ややややばい。
高瀬の言葉に焦りすぎてまともな思考が働かなくなった…っ。
一先ず深呼吸をして、考えてみよう。
「…すー……はぁー…」
吸っては吐いて、吸っては吐いてと繰り返して深呼吸をする。
…そうすれば興奮してまともな答えを出さなくなった頭が、段々とまともになっていく。
と、とりあえず、
“そっち”っていうのは、確実に俺の所に来るっていう意味だよな。
俺の所=俺の家
……つまり高瀬は今から俺の家に来るってこと?
「……え?……まじで?」
毎週木曜日の夜は決まって両親は仕事で帰ってこない。
…だから結論を言えば、今家の中は俺一人……っ。
「……お、俺一人……っ?!」
…ピンポーン
やっと現状がつかめたというところで、チャイム音が聞こえてきた。
……ま、まじで?
「…で、出なくちゃ、駄目?」
俺は玄関で高瀬を迎えることができなくて、おもわず反射的に布団を頭から被った。
俺のせいで起こしてしまったというのに、俺のことを心配してわざわざ家に来てくれたっていうのは凄く嬉しい。
…す、凄く嬉しいよ?
だけど好きな人と、家で二人きり?
そ、そんなの恋愛初心者な俺には無理です!
女の子と手を繋いだのだって、幼稚園の遠足が最初でそれっきり一度もない。好きな人に告白したことだってない。
そんな俺が好きな人と二人っきり…?
む、無理だよ。絶対無理!
俺にはそんな破廉恥なこと出来ない…っ。
ピンポーン。
俺が出ないことに焦れたのか、高瀬(だと思う)は二度目のチャイムを鳴らした。
……ど、どうしよう?出るべきだよな?
だけどどんな顔して出ればいいんだ?
どんな格好をして出ればいいんだ?
格好はこのままでもいいのかな?中学のときから来ている水色の生地に水玉模様のパジャマ。
……いやいや、好きな人の前に出るのには格好悪過ぎだ。
ピンポーン。
ピンポーン。
………………。
ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピンポーン。
「ひっ…?!」
れ、連打…?!
まさかの連打だと…?!
めちゃくちゃ怒ってるじゃんか、高瀬…っ。
なんか出迎えた瞬間、「遅い!」って物凄く怒られそう…。
そう思うと更に出にくくなってしまい、俺は怒られるのが怖くて、携帯電話の電源をおもわず切ってしまった。
……ど、どうしうよう…。
ここまで徹底的に無視を実行してしまったら、後にひけなくなってしまった…。
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