「う、…嬉しかった?」
『あぁ。すげぇ、嬉しかった。』
「そ、そっか。…えへへ、そっか…。嬉しかったんだ。それなら良かった。」
高瀬の口から聞けた、“嬉しい”というという言葉が俺にとっては凄く“嬉しくて”、本当にだらしないくらい頬の筋肉が緩んでしまった。
ニヤけ顔どころか、「えへへ」なんて奇妙な笑い方をしてしまったけど、…これは致し方ない。
だって嬉しいものは嬉しいんだもん。
『……それで、仁湖?』
「ん、…何?」
『何で眠れなかったんだ?』
「え……?」
えっと、何て言えばいいんだろう?
“一万円がなくなったら高瀬と一緒に居られなくなると思ったから眠れなくなった?”
そ、…そんなことご本人に直接言うことなんて出来るわけない…。
それにこんなこと正直に言ったほうが、高瀬に嫌われてしまう…。
とりあえず、掻い摘んで高瀬に眠れなかった理由を言うとしよう。
「あの、えっと、…その高瀬のことが気になって…、」
『……お、おま、…それ、…どういう意味…?!』
俺が掻い摘んで訳を話すと、何故か電話の向こうの高瀬が慌てだし、どもり出した。
「え、…だからそのそういう意味だけど………って、」
………うわぁっぁあっっ!!!
こ、これだと違う意味に捉えられてしまうよな…っ。
“高瀬のことが気になって”?
これって遠回しに告白してるもんじゃないか?!
「た、高瀬…、あ、あの今のはちょっと違って、えっと、…その、だから…っ」
『な、……何だよ…?』
「だ、だからね、…その、高瀬に会いたくなってメールしたっていうか…っ」
『……………っ』
あ、あれ?
お、俺何か変なこと口走ってないか?!勢いに任せて更に凄いこと言ってないか?!
「た、……高瀬その今のは違うくて、…いや、違わないけど、…そ、その違うんだ!い、今のは、そのえっと…っ」
あぁーー、俺何を言っているんだ?!
どもり過ぎて何を言っているのか分からないし…。
「そ、…その高瀬…っ」
………って、あれ?
な、何だか高瀬が静かになってる…?な、何で?
「高瀬…?」
『……………仁湖。』
「え…?な、何…?」
高瀬の言葉の続きが気になって、おもわず喉がゴクリとなってしまった。
『仁湖……今から…、
そっちに行く。』
ガチャ。
へ?
あ、あれ?
“ガチャ”?
も、もしかしなくても電話切られた…?
そうだよね?何だか電話口からはツーツーツー…という機械音が聞こえるし…。
……というか、
あれ?
“そっちに行く”って言った?
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