2







「…高瀬。」

俺は高瀬の名前をボソッと呟く。
しかしそれだけの音量では、眠っている高瀬には俺の声は届かない。高瀬は微動だにせず、気持ちよさそうに寝ている。


「寝顔も格好いいとか、

……何かずるい。」


いつも皆に恐怖感を与えている鋭い眼は閉じられているせいか、起きているときよりも少し可愛く思えるのだが、美形は寝ていても美形のようだ。


「……起きろよ、馬鹿。」

クシャクシャと高瀬の髪を撫でる。
初めて高瀬の髪を撫でたときと同じで、やはり高瀬の髪は全く痛んでいない。
ダークブルーに染められている髪はサラサラだ。


……きっとこんな風に自分から高瀬に触れられるのは、高瀬が寝ているからだろう。
高瀬が起きていたら、こんなこと恥ずかしくて出来ない。

…好きな人だし、こうして触りたくなるのは仕方ないことだろ?
だけどこんな風に起きているときに自分から触ったら、きっと高瀬に変な風に思われる。
……それにもし触って、拒絶されたら凄く嫌だ。
絶対落ち込む。





……だから、


寝ている今くらいは、





「…触ってもいいよね?」


俺は誰かに確かめるわけではなく、自分に言い聞かせるように言葉に出す。


大丈夫。
高瀬は今、寝ている。


だから、もうちょっと。




あとちょっとでいいから、




普段触れない分だけでも、今触らせて…。







「……高瀬」

俺は高瀬の寝ているベッドの端に腰を下ろし、高瀬が起きないように、最善の注意を払って髪の毛を撫で続ける。






…好きだ。




どうしようもないくらい好き。




高瀬が好き。


こんな風に誰かのことを思ったのは初めてだ。
高瀬と出会えて、俺は色々な“初めて”を体験した。


机を瞬間接着剤で引っ付けられたり、

友達の教科書を窓から投げられたり、

不良からおもいっきり殴られたり、

ほっぺたや目元を舐められたり、

首や耳たぶを噛まれたり、



………抱き合ったまま同じベッドで眠ったことも、




……そして“恋”とは胸が締め付けられるような思いをすることも初めて知った。



全部高瀬が初めてだ。






117/300
<< bkm >>
MAIN TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -