「……っ」
「……あ……、」
すると高瀬は片手で俺の頭突きされた場所を押さえて、ギロリと睨んできた。
や、やばい…。
俺、くりょう学園のトップになんてことを…っ。
“頭突き”?!
や、やばいぞ。
もしかして、俺今日殺されちゃうかも…。
「た、高瀬、その…ご、ごめん!俺つい…」
でも高瀬だってちょっとは悪いんだぞ。
…何か様子が変だったし。あのまま近づいていたら確実に俺達は今頃………っ。
そして俺は頭突きをしていなかったらどうなっていたのかを想像して、真っ青だった顔を真っ赤に染めた。
「い…痛い…?」
「……………」
「た、高瀬?」
「……………」
や、やばい。
高瀬何も喋ってくれないんだけど…。
それどころか頭を押さえたまま、俺のことずっと睨んでるんだけど…。
やっぱり今日が命日…?!
「ご、ごめん、高瀬。痛いよな、…えっと、」
押さえている指の隙間から見える高瀬の額は、真っ赤になっている。
見ているだけで痛くなるほどだ。
少し腫れているようだ。
……どうしよう。
どうしよう。
俺は混乱する思考を必死に働かせて、どうやったら高瀬の機嫌と、怪我させた場所を治すかを考えた。
そして俺は考えた結果、高瀬の真っ赤になった額に手を当てて…、
「…えっと、
痛いの痛いの飛んでいけ〜……、
…なんちゃって、…えへへへ…。」
「…………………」
……………。
…っ、や、やばいぞ。本当にやばいぞ…。高瀬固まって動かなくなっちゃった…っ。
もしかして、「ふざけてんじゃねぇ!」とか怒られるんだろうか…?そ、そうだよな。こんな子供騙しみたいなことして高瀬の機嫌が良くなるわけ、
………って、
「た、高瀬、…は、鼻血っ?!」
な、何ということだっ?!
額の怪我の次は、高瀬は鼻から赤い血をポタポタと流している。
そして怪我のせいで真っ赤になった額と同じくらい頬と耳を真っ赤にしたまま高瀬はボソリと喋った。
「……萌え…。」
「は、はぁ?!もえ?」
なんだよ…っ?!
俺のせいで高瀬はおかしくなっちゃったのか?!
鼻から大量の血をボトボト零しながら、ずっと「萌え」だの「可愛い」だの訳の分からないことを喋っている。
俺は頭のおかしくなった高瀬を治すことが出来ずに、ただオロオロしていると、いつも俺と高瀬の次に教室に入ってくる不良の生徒に驚いた顔をされた。
…………そして俺は、『あの高瀬葵に鼻血を流させた平凡男』として一躍有名になってしまった。
泣きそうです…。
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