好きだからこそ隠す







『…ごめん、俺、…その、佐藤さんの気持ちは受け取れない。』


『………うん…。』


『その、…俺、気になる人が……居て。』


『うん、…何となく気付いてた…。』


『……え?…じゃぁ、何で、…俺に?』


『ただ、仁湖君にこの気持ちを伝えたかったの…。ごめんね、困らせるようなことして…』


『いや、…そんなことないよ。』


『…良かったら、これからも友達で居てくれる?』


『うん、もちろん。』








_______





……俺は今日起こった出来事を、ベッドの上で寝転がりながら思い出す。



本音を言うと、佐藤さんの告白は本当に焦ったし困った。
佐藤さんのことは好きだけど、……それは何ていうか、友達としてだし…、俺なんかじゃ不釣合いだ。




でもこのお陰というか何というか、…自分の気持ちに気付けた。


佐藤さんは、「この頃の俺は恋する乙女のように生き生きとした表情をしている。」と言った。

……確かにその通りなのかもしれない。
俺は自分の気付かない内に高瀬に惹かれ、恋をしていた。



「…バレちゃヤバイよなぁ……」


自分の気持ちに気付けたのはいい。
……だけど、俺と高瀬は



“男”。



これこそ不釣合いだ。


自分の思いを告げるのは簡単だ。
……だけど、その思いを告げて高瀬は俺のことをどう思うだろう?



“気持ち悪い”?



…嫌だ、そんなの、…絶対嫌だ。

嫌われたくない。
気持ち悪いとか思われたくない。
高瀬に離れて欲しくない。
……高瀬とずっと一緒に居たい。




嫌われるくらいなら、

……いっそこの気持ちを隠し通したほうがいい。






……そして俺は高瀬への気持ちを隠し通すことを決意した。







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