『…ごめん、俺、…その、佐藤さんの気持ちは受け取れない。』
『………うん…。』
『その、…俺、気になる人が……居て。』
『うん、…何となく気付いてた…。』
『……え?…じゃぁ、何で、…俺に?』
『ただ、仁湖君にこの気持ちを伝えたかったの…。ごめんね、困らせるようなことして…』
『いや、…そんなことないよ。』
『…良かったら、これからも友達で居てくれる?』
『うん、もちろん。』
_______
……俺は今日起こった出来事を、ベッドの上で寝転がりながら思い出す。
本音を言うと、佐藤さんの告白は本当に焦ったし困った。
佐藤さんのことは好きだけど、……それは何ていうか、友達としてだし…、俺なんかじゃ不釣合いだ。
でもこのお陰というか何というか、…自分の気持ちに気付けた。
佐藤さんは、「この頃の俺は恋する乙女のように生き生きとした表情をしている。」と言った。
……確かにその通りなのかもしれない。
俺は自分の気付かない内に高瀬に惹かれ、恋をしていた。
「…バレちゃヤバイよなぁ……」
自分の気持ちに気付けたのはいい。
……だけど、俺と高瀬は
“男”。
これこそ不釣合いだ。
自分の思いを告げるのは簡単だ。
……だけど、その思いを告げて高瀬は俺のことをどう思うだろう?
“気持ち悪い”?
…嫌だ、そんなの、…絶対嫌だ。
嫌われたくない。
気持ち悪いとか思われたくない。
高瀬に離れて欲しくない。
……高瀬とずっと一緒に居たい。
嫌われるくらいなら、
……いっそこの気持ちを隠し通したほうがいい。
……そして俺は高瀬への気持ちを隠し通すことを決意した。
111/300