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「……あ、高瀬……」
佐藤さんから告白を受けて、帰ろうと門をくぐろうとしたところで門のところに立っている人物に気付いた。
……高瀬だ。
「帰ってなかったのか…?」
「…あぁ。」
「……そっか、…ありがとう。」
高瀬は俺を待っていてくれたようだ。
それは嬉しい。
………だけど今の俺には、気まずくて仕様がない。
「…………」
「…………」
「…………」
長い沈黙が続く。
…何て喋りだせばいいのか分からず、戸惑っていたら、先に沈黙を破ったのは高瀬からだった。
「……どうだったんだ…?」
「……え?」
「女………」
「知ってたのか…?」
「あぁ…。」
どうやら高瀬は全部知っていたらしい。
…俺より朝早く来ている高瀬が、丁度学校に着いたとき、俺の靴箱に手紙を入れている佐藤さんを見掛けていたらしい……。
……何だよ。
じゃぁ、俺が嘘付いてたのも知ってたってわけか……。
それなのに高瀬は騙されるフリまでしてくれて、…おまけに俺の帰りも待っていてくれて………。
「ごめん、…高瀬。」
「いや、それはいい…。それより……、」
高瀬は俺が佐藤さんの告白に何て返事をしたのか気になっているようだ。
…俺はそのときの一部を高瀬に話した。
俺が佐藤さんの告白を断ったこと。
……女の子を泣かせてしまったこと…。
でも、後悔はしていないということ…。
途切れ途切れに話すと、高瀬はまるで俺を励ましてくれるかのように、優しい手付きで頭をポンポンと撫でてくれた。
「………辛いか?」
「…ううん。大丈夫。」
「そうか…。」
俺が佐藤さんの告白を断ったと知って、高瀬は隠しているつもりだろうが、嬉しそうに微笑んでいる。
…普通は友人にこんな態度を取られたらむかつくんだろうけど、……俺は全然そんな気持ちにはならなかった。
むしろ嬉しかったのかもしれない………。
だって俺、…気付いてしまったから。
俺は、
高瀬のことが、
…好きなんだって……。
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