「…た、高瀬!」
俺はピョコンピョコン跳ねている髪を直すことすらせずに、高瀬の元へと向かった。
「こ、これ見て…っ!」
「何だよ…」
大きな声で騒ぐ俺に、高瀬は少し眉を顰めながら俺に何事なのか訊いてくれた。
「これ!これっ!」
俺は鏡を見て発見した首元の赤い痕を高瀬に見せる。
「また何かに刺されてるんだよっ!」
着ていた服を横にずらして痕を見せると、高瀬はそれを見た瞬間ニヤリと笑った。
その悪どい笑みが何だか恐くて、俺は一歩後ずさる。
「…た、高瀬?」
「何に刺されたんだ?」
「え?…わ、分かんない。」
また蚊かな?
…何で、またこんな時季に…。
しかも見た感じ、高瀬は刺されてないみたいだし…。
「…刺されたっていうより、吸われたって感じだな…。」
「あ、…う…わっ?!」
俺が色々と考えている間に高瀬が俺に近づいてたらしい。
…そして高瀬は俺の首元にある赤い痕を指の腹でツーと撫でる。
「ン、…ちょっと、…やめっ…?!」
高瀬の触り方が妙にやらしくて、もう一度後ずさって高瀬との距離を取ろうとしたのだが、高瀬がそれをさせてくれない。
一歩下がろうとすれば、高瀬が俺の腰を掴んで引き寄せる。
「…たくさん付いてるな。」
「…えっ、本当に?」
首だけではなく高瀬は俺の胸元にまで指を這わす。
指を指された場所を見ると、確かに俺が鏡で見た場所以外にも、たくさんの赤い痕があった。
「な、何これ…?」
蚊に刺されたにしては、痒くない。
そして痛くもない。
「病院とか行ったほうがいいかな?」
発疹……、じゃないよな?
変な病気じゃなければいいけど…。
「行ってもいいが、きっと変な目で見られるぞ。」
「え…?」
高瀬は楽しそうにククッと喉で笑っている。
……な、何だ変な目って…?
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