心の真意








鞄を教室から取った俺たちは今、高瀬の家に向かって歩き中…。

てっきり俺とほとんど同じ帰路を通るのかと思っていたのが、全くの逆方向だった。
一番最初のとき、高瀬は俺を家まで送ってくれた。

…ということはだぜ?
もしかしたら物凄く遠い距離を歩かせてしまったってことだよな?



本当に高瀬は、…何処までも優しいやつなんだな。
俺は面と向かって、「ありがとう。」と言うのが恥ずかしくて、心の中で何回も感謝の気持ちを告げた。





「…ねぇ、高瀬。」



「何だ?」



「さっきの俺の行動に怒った?」



“さっきの行動”というのは、もちろんいきなり抱き付いたこと。
あの時、想像以上の反応をした高瀬に俺は驚いた。
怒った顔はしていなかったものの、もしかしたら内心は物凄く怒っていたのではないかと不安になって、真意を高瀬に訊ねる。





「………別に、…怒ってねぇ…」




「本当?…それなら良かった。もう二度とあんなことしないから、安心して。」


本当に怒ってないとしても、あまりいい風には思わなかったのだろう。
現に、物凄く慌ててたし。

…皆に高瀬の良さを知ってもらいたかっただけだったのだが、何かと裏目に出てしまったようで、俺は内心落ち込む。






「…二度としないって、…何だよ?」




「へ?」



上から聞こえる高瀬の少し不機嫌そうな声に俺はおもわずビクつく。




「だ、だって、…嫌だったんだろ?」




「嫌だなんて、一回も言ってねぇ。」




確かによくよく考えれば高瀬は一度も、「嫌だった。」なんて言ってない気がする。





「もし、…また俺が抱きついてきたとしても怒らない?」




「あぁ…。」





「うん。分かった。…また機会があればね。」



…何て言ってみたけど、きっともう機会なんてないだろう。
だけどそう言わないと高瀬はずっと不機嫌なままだろうと思った俺は、空気に任せて頷いた。


意外と高瀬ってスキンシップが好きだよなぁ。
この抱き付きにしても、今現在もしている手を繋ぐことも。

…そういえば、俺が殴られたときは頬舐めてきたよな……。あ、目も舐められたんだった…。
なんかよくよく考えれば恥ずかしいことだよな。
男同士なのに…。だけど、何で嫌な気がしないんだろう?



俺は不思議に思ってその気持ちを確かめるべく、先ほど高瀬に舐められた頬を指で摩った。





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