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「……ここ。」
「えっ、ここに住んでるの?!」
「あぁ…。」
でけー…。
高瀬が住んでいる場所は高級住宅街の中にある、一際デカい高級マンションだった。
いいなぁ。
羨ましい。
高級マンションってことも羨ましいけど、俺は“マンション暮らし”というだけで羨ましい。
俺の家は一軒家。
小学生や中学生のときはマンション暮らしの人が本当に羨ましかった。
同じマンション同士仲良く学校に通っている姿にずっと憧れていたのだ。
俺の家の近くに住んでいる同級生が居なくて、凄く寂しい思いをしていたことを今でも覚えている。
高瀬は暗証番号を入れ、そして鍵を挿し込んで自動ドアを開ける。
高瀬は先にエレベーターに乗り込むと、万が一扉が開かないように、手で扉を押さえると俺に入るように促す。
「…あ、ありがとう。」
「あぁ。」
…何かこういうのって凄く嬉しいけど、恥ずかしい。
俺は少し赤くなってしまった頬を、高瀬に気付かれないように俯く。
そして、なんと着いた場所は最上階。
……すげー、本当にすげー。
どんだけ金持ちなんだ…?
「ここ…。」
「あ、…うん。」
高瀬は扉の鍵を開けると、先ほどと同じように俺に中に入るように促す。
「お、…お邪魔します。」
「あぁ。」
何か凄くドキドキする。
高瀬の家に上がることだけでも十分緊張する要素満載なのに、こんな高級マンションの一室に上がるなんて……。
キョロキョロと辺りを見回す俺。
凄く部屋が広い。
…必要最低限の物しか置いていないため、更に広く感じる。
そういえば玄関のところには、高瀬の物と思われる靴が一足しか置いていなかった。
………も、もしかして、
「ひ、一人暮らし?」
「あぁ、そうだ。」
ま、まじかよ?!
凄い。
こんな高級マンションで高校生が一人暮らし?!
凄い、本当に凄い。
…凄いけど、
「大変そうだな。」
「…そうでもねぇよ。」
そうか。
親が居ないから、毎日昼ご飯がパンか学食なのか…。
高瀬が自分で作るって想像できないしなぁ…。
…つーか、一人暮らしってことは、
ふ、二人きり…?
なんかそう思うと凄く緊張する。
「だから気を遣わなくていいから。」
いやいやいやいや、逆に気を遣ってしまうって!
…まだご両親が居てくれたほうが、何かと気が楽だ。
な、何だろう…?
何か二人きりだと思うと、…凄く、
ドキドキしてきた…。
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