「…たか、…せ。」
ギュッと抱き付いたのはいいものの、これからどうすればいいんだろうか?
俺のいきなりの行動に周りの皆はもちろんのこと、高瀬まで固まって動かない。
「……あ、……あれ?」
不思議に思い、高瀬の硬い胸元に埋めていた顔を上げようとすると、…ビシっと額に痛みが走った。
「…あ…ぅっ!」
その痛みの原因は、高瀬が俺の額にデコピンをしてきたからだ。
俺は、「何するんだよ…っ!」と高瀬に怒鳴ろうとしたところで、止めた。
……だって、
高瀬の顔が、
…見たこともないくらい真っ赤に染まっていたからだった。
「真っ赤………」
「ばっ、…お前、今こっち見るな…っ。」
高瀬はそう言って自分の手で赤くなった顔を覆うと、俺の頭を押さえつけてきた。
高瀬の見たこともない慌てように、俺も周りの皆も驚く。
先ほどの俺のいきなりの行動に固まっていた皆は、ザワザワと騒ぎ出す。
「……高瀬…?」
「…お前、まじ……何…?」
高瀬俺から目を逸らしながら、照れを含んだ声でそう言う。
「…可愛すぎ……」
「え?」
抱き付いたのがいけなかったのだろうか?
…ちょっと高瀬が可愛く見える…。
こんな格好いい人に可愛いはおかしいかもしれないけど、
……うん。
可愛い。
「高瀬、教室行こう。」
高瀬の背に回していた腕を外し、俺は高瀬の手を握り直す。
「………仁湖、…お前はやっぱり死刑な。」
「えぇっ?!な、何で…?」
やっぱりいきなり抱き付いたことがいけなかったのだろうか?
…で、でもあれは、皆に高瀬の良さを知ってもらいたくて……、
「可愛すぎるから、死刑決定。」
「な、…何だよその理由っ?!」
「……嫌だったら、
死ぬまで、俺と居ろ。」
高瀬はそれだけ言うと、ギュッと俺の手を握って歩き出す。
「死刑かー。へへへ…っ。」
死ぬまで高瀬と一緒に居れるのか。
嬉しいかも……。
ヘラヘラと馬鹿みたいに笑う俺を見て、高瀬もふっ…と笑う。
そして俺たちはポカンとしている周りの皆を置いて、教室に鞄を取りに行った。
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