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トクサが無闇矢鱈に教団の人達を傷つけていく。ミナはそれをせめて最小限に抑えようと必死に刀を振るっていた。

トクサを斬りたくない。だって、だって大事な仲間だから。


だけど、もうそんな我儘は言ってられないから。



「守り神が宿りし精霊石よ…っ、我、チャンの血の元に応えよ……っ!

封神 招喚!!



バクが帽子につけていた精霊石に血を垂らす。向けられたトクサは悲痛な声を上げる。

そんな中、バウンッと出てきたのは守り神、フォー。



「…わたしは、」



ミナは戦いに加わるのをやめて、未だ捕まっているルベリエの元へ歩み寄る。自らに近づいてきたミナの姿に、ルベリエは隠すことなく顔を歪めた。



「何をしているのです、ミナ。早く戻って戦いなさい!」

「…お聞き、してもいいですか?」



小さな小さな声だった。なのに何故かするりと耳に入り込んでくる。いつもとどこか様子が違うミナにルベリエも口を噤む。



「…どうして、トクサ達にあんなことをしたんですか…」

「…我々が勝つためには必要な代償だからです」

「その為だったら何をしてもいいって?頭おかしいんじゃないの!?」



初めてルベリエを否定したミナに、その声が聞こえていた者たちは驚いた。無理もないだろう。ミナは中央庁からやってきたエクソシスト。そして何より、ずっとルベリエを尊敬していたのだから。

そんな彼女が一体なぜ、ここへ来てルベリエに怒鳴るのか。伯爵達も面白そうに意識をミナへ向けた。



「…今、この場で起きている事の発端は、全て貴方ですよ、ルベリエ長官」



トクサがああなってしまったのも、神田とアルマが戦っているのも、全て。

ルベリエが、もっと言えば中央庁がそれを決定しなければ、こんなにも被害は出ていなかったはずだ。



「こんなの、あの変態眼鏡と一緒じゃないか」



ギリッと拳を握りしめて、ぼそりと呟く。変態眼鏡とは言わずもがな、あの眼鏡のことだが、今はどうでもいいだろう。



「(へェ〜、あのルベリエにああも言える奴がいるとはねぇ)」



ティキはニヤリと口角を釣り上げて笑う。伯爵や他のノア達も、皆同様に笑っていた。

元々白崎ミナの情報は少なく、わかっていない事の方が多い。だからこそ余計にミナに対して興味が湧いてきてしまう。



「…白崎ミナ、貴方は何者なのですカ?」



ついに伯爵がミナに尋ねた。興味の対象が自分に向いたミナは、ルベリエに背を向けてゆっくりと伯爵達を見つめた。

自分が何者か、今ならもうはっきり言える。


こんな形でルベリエに伝える事になるとは、とミナは苦笑した。あんなにも悩んでいた事が無駄になってしまった、と。

ミナは着ていたコートを脱ぎ捨て、死覇装姿になる。腰にはしっかりと斬魄刀を差し、眼光を滲ませながら口を開いた。



「私は、護廷十三隊五番隊第四席、白崎ミナ。


死神だよ」



今ここに、一人の死神が本当の意味で復活を果たしたのだった。