10「伯爵ぅぅぅ!!!」 腕から対魔の剣を取り出したアレンは叫びながら千年伯爵へと斬りかかった。しかし伯爵も似た剣を取り出し、応戦する。 その時に見えたアレンの瞳を見て、伯爵はニヤリと嬉しそうに笑った。 「“憎悪”…ッ、イイ瞳だアレン・ウォーカー〜!」 伯爵の目はギラリと光っている。それでもなおアレンは伯爵に歯向かっていく。 そんなアレンにクロスはマリアの歌で止めようとしたが、それよりも先に淡いブルーの髪が目の前を横切った。 「あぁぁあああああ!!!」 ――ガキンッ!! 叫び声が、金属音によって遮られた。アレンが目を見張り、目の前にいる人物を見やる。 そこには、浅い息を小刻みに零しながら対魔の剣と刀を交えさせた、 血塗れのミナがいた。 「ハ、ッハ……」 「な、で、…っどいてください!」 「っ、ハ、…怒りは、」 怒りは刃を鈍らせる 何の曇りもなく紡がれた言葉は、今のアレンを表していた。 仲間を次々となくしたアレンは、今や怒りと憎しみで伯爵と対峙していたのだ。見透かされた自分の感情に、アレンはぐっと押し黙る。 「…大切な人を失いたくないなら、ッ、怒りや憎しみで戦わないで……!」 あの時、自分は怒りで戦ってしまったから。だから大事な人を護れなかった。 アレンにはそんな思いをさせたくない。その一心でミナはボロボロの体でアレンに訴えかける。 「貴方は………」 「伯爵タマァァァ!!!」 アレンが何か言おうとしたが、突然レロが泣きながら伯爵の元へ飛んでいく。伯爵はにこやかに笑いながら、いきなり出現したロードのドアに吸い込まれていった。 「立て、お前に手伝わせる為にノアから助けてやったんだ」 「……てつだう…?何をするんですか…?」 「任務だ」 ドンッ!と崩れゆく方舟の中で、新たな任務が始まる。 「任務…!?」 「オレが何の為に来たか知ってるだろうが」 「…!アクマの…“ 「この 「部屋はまだ残っている。“ クロスがティムに命じると、ティムはカッと光った。そして視界に飛び込んできたのは、地面に転がる骸骨、それから卵だった。 その卵は、まるで生きているとでも言うかのようにドクン、ドクン、と呼吸している。 「(やばい、崩壊が……。卍解もキツい…)」 冷や汗が流れて止まらない。けれど死ぬわけにはいかないんだ。 帰るって、長官たちに言ったから。 約束は、守るためにあるから。 ミナはふぅ、と小さく息を吐くと、クロスが術で卵の転送を遅らせているのに気づいた。 今から何をするかなんて私には想像もつかないけど、この方舟のことを知り尽くしているクロスに助力しようと口を開いた。 「“時間停止”」 卵に向けたそれは、言葉通り転送の時間が停止された。これは四十六室の禁術だが、勿論ここには四十六室なんてないし、どこで使おうと咎められることもない。 しかし、いきなりミナから放たれた言葉と時間が停止された卵を見て、クロスは驚きを表面にこそ出さなかったが内心は問いただしたい気持ちでいっぱいだった。 ミナもそんなクロスの気持ちに気づいていたが、無理が祟ったのだろう。 ふわりと羽が舞うように倒れていった。 |