08ミナの意識が浮上する。ゆるりと目を開けると同時に目の前に何かが迫ってきた。 リナリー達が閉じ込められていたのと同じ物で、自分も閉じ込められていると理解したミナは斬魄刀で即座に斬り、迫ってきていた何かを避ける。 「……だれ、あれ……」 アレン達が戦っているのは、覚醒したティキ。しかし前の面影は全くと言っていい程ない。 リナリーがティキに捕まり、思い切り地面へ叩きつけられる。その後をチャオジーが手を伸ばしながら追いかけた。 ミナは一部始終を見て、プツンとキレた。 ゆらりと斬魄刀を構えて、目敏くミナを見つけたティキを睨みつけ、声高に叫ぶ。 「飛びたて、杏樹!!」 始解した杏樹は刀身、柄が真っ白へと変化する。フォン、と一振りすると純白の羽が辺りに舞い上がった。 ホウ…とこの緊迫とした雰囲気の中、何故か見惚れてしまう。あのティキでさえもだ。 「……ちゃんと任務、完遂しないと…。長官たちにも顔向け出来ないし、何より…」 ――胸を張って貴方の部下だと言えなくなる フッと嘲笑にも似た笑いを零し、足を踏み出した。 「カカカッ!」 「……ッ、(さっきまでとはまるで殺気が違う…!) ひらりひらりと羽がティキを包み込んでいく。サァァ、と斬魄刀の刀身が全て羽へと変化して、ティキを呑み込んだ。 どうにかノアの暴走を抑え込もうとミナは斬魄刀を掲げるが、それでもノアの覚醒は強いのかティキの紐のような物が羽から這い出てきた。 「!杏樹!!」 ミナの呼びかけに羽はティキを逃さないように強固な円形へと形を変える。しかし、一瞬の隙をついてティキは羽を一掃した。 羽はブワッと広がり、元の斬魄刀の刀身へ戻った。 「ガアァア!!」 「っ!」 瞬きしたタイミングと同時にティキがミナの目の前まで突っ込んで来る。咄嗟の反射神経を駆使して体を仰け反らせるも、ティキの鋭く尖らせた手はミナの右脇を貫通した。 ブシュッ!と血が吹き出すのにミナはかおを歪ませる。途轍もない痛みがミナを襲うが、ここで引くわけにはいかない。 まだ刺さったままのティキの腕を掴み、右手に持った斬魄刀で斬りつけた。 みるみるうちにボロボロと朽ちて行くティキの腕。だけどそれも数秒だけ。朽ちは自然に止まってしまった。 「な、っ!? そんな!」 「クヒヒッ!!」 ――ズプリ 不気味な笑いと共に、ティキの腕が右足を貫通した。途端に崩れ落ちるミナにトドメを刺そうとするティキ。 だが、いきなりティキの腕に何かが巻きつく。 「間違えるな…あなたの敵はこっちだ…。言ってたでしょ、確か…。 僕を、殺したいんじゃなかったんですか…?」 アレンの言葉を聞いたティキはすぐに地面を蹴り上げた。ミナはハッ、ハッ、と浅い息を繰り返しながら、朧げな視界でアレンとティキを見つめる。 「ここからもう…生きて出られないとしても、命が尽きるまで戦ってやる…っ! マナとの約束だ…っ!!」 対魔の剣を構えたアレン。そんなアレンの足元には十字架の模様がカッと浮かび上がった。一瞬にして地面を抉り、アレンは落ちて行ってしまう。 しかし、アレンは地面とこんにちはする前に、骸骨に足を掴まれた。 「なんだこの汚ねぇガキは。少しは見れるようになったかと思ったが…いや、汚ねェ。拾った時と全然変わらんな、馬鹿弟子」 "馬鹿弟子" そう口にした骸骨の頭の上には、アレンのゴーレムであるティムキャンピーが。 「これは対アクマ武器、 お…おひさし…ぶり…です…」 「なんだその“嬉しそうな”顔は。 おとそうか?」 ザザ…ッと骸骨の顔が剥がれていく。 その素顔は、アレン達が探し求めていた人物、 クロス・マリアンだった。 |