06眩しい光りの終わりに広がっていたのは、まだ 目線を奪われる大きなテーブルにはエクソシスト三人、…サポーター(?)一人、ノア二人。 いきなり現れたミナに驚いているのはエクソシスト達だけだった。ノアの二人はニヤリと悪巧みのような笑みを浮かべている。 「いらっしゃぁーい、お前もエクソシストだろぉ〜?」 「うん、そう言う貴方はノアだよね?」 「そぉだよ〜!」 「エ、クソシストって!僕らは貴方を知りません!一体誰なんですか!?」 ミナとロードの会話に割り込んで来たのは白髪のエクソシスト、アレン。リナリーやラビやチャオジーも気になるのか黙ったままだ。 ここで自己紹介か、と姿勢を正したミナは見られる不快感に必死に笑顔を保った。 「初めまして、中央庁より派遣されました。白崎ミナです、どうぞ宜しくお願いします」 何度もリンク達から仕込まれたお辞儀をすると、ガタン!と椅子の音が大きく聞こえた。その音はリナリーからで、彼女は中央庁という単語に酷く驚いている。 ルベリエから聞いていたとは言え、やっぱりこんな反応か。かと言ってここで顔を歪める訳にはいかない。 ミナはニコリとリナリーに微笑みかけた。 「へぇ〜、僕らの誰とも会ったことないよねぇ?」 「基本外に出なかったから」 「ふうん、籠の中の鳥ってやつ?」 「私はそんなのじゃなーいよ!戦い方を教えて貰ってたのー」 まるで今が戦争の真っ只中というのを忘れるくらい呑気な会話。 しかしそれもティキがいきなり立ち上がった事で終わりを告げた。 「(あ、ていうか皆の名前知らない…いやリナリーって子のは知ってるけどさ、)」 「オレね、千年公の終焉のシナリオっての?遊び半分で参加してたんだけどさ、やっぱ悪はそうでなくっちゃなぁ。 うん、少年のおかげでちょっと自覚出てきた」 フー、とティキは煙草の煙を吐き出す。ピリピリとした雰囲気をミナは肌で感じ、周りから見ても何ら変わりはないがいつ、誰が動いてもいいようにもう戦闘準備は完璧だ。 「退治?本気でやんねェとなってのがわかったわ」 ――バンッ! 「ティキ・ミック。僕もひとつ言っときたいんですが、」 アレンのイノセンスがリナリーに近づいていたティーズに突き刺さっている。先程の大きな物音はそれだろう。 「これ以上…僕の仲間に手を掛けたら、僕は貴方を殺してしまうかもしれません」 ダンッと音を立てながらアレンはテーブルの上からティキを狙う。ティキもティキで応戦しようと手を翳した。 「アレンッ!」 「ティッキーもねぇ、アレンのことが好きなんだよ。邪魔しな〜いで♪ 僕と遊ぼー♪ ブックマン」 方舟消滅まで――刻限は間近… 「ラストダンスといこうぜ、少年」 そう言ったティキは不敵に笑った。 「(さて、と。私は完璧部外者扱いじゃん。不意打ち狙ってもいいんだろうけど…そんなのやったらあの白髪君とか絶対怒りそう!)」 放ったらかしにされたミナは心の中で暇暇暇と叫んでいた。しかし誰もミナを気にする者などいるはずもない。 だけどいきなり何か"気配"がしたため、瞬時にイノセンスを抜いて何もない所を斬り裂いた。 だが実際は箱のような透明な物を斬っていて、現にリナリー達がこれに捕まっている。自分も反応が遅れていたらあぁなっていたのかと斬り割かれた物を見つめた。 「わぁ!ミナすごーい!どうしてわかったのぉ?」 「慣れだよ慣れ。あとそんな得体の知れないのに捕まる気はありませーん」 「ぷぅ、巻き添えくらっても知らないよ?」 「あのねぇ、こう見えて結構戦えるから!そんなヘマは致しません!」 やっぱり弱く見られてたかと落胆してしまうミナ。するとロードは話しの矛先をラビへと変える。 そのままラビはロードの能力で暗闇に呑み込まれてしまった。 「っ、」 また、だ。頭が痛い。 ここの所ずっとだ。 「チッ…鬱陶しい!」 ぐしゃっとミナは自分で自分の髪を乱す。ガンガンする頭痛を必死に抑えていると、リナリーの甲高い声がミナの鼓膜をつんざいた。 「貴方そこで何やってるの!? ラビの代わりに貴方が行けば良かったじゃない!」 「……言うねぇ」 「あはっ♪ ミナかっわいそぉ〜」 「まあ覚悟はしてたから。こんなのいちいち気にしてちゃあ持たないし」 リナリーの言葉を無視するようにロードと話すミナに、リナリーは更に苛立って行く。 ロードはふふふ、と笑うと楽しそうにラビを見下ろした。 「ふふ♪ さぁて、次期ブックマンのココロはどこを突くと血が吹き出すのかなぁ〜♪ 真っ赤で綺麗〜な飴色だといいなv」 細められたロードの目。そのあどけなさとは反対に性格は最悪だ。 そうしている間にも、ティキとアレンの戦いはヒートアップしていく。互いが互いに容赦無くぶつけていくそれを、ミナは一度何処かで見たような錯覚を覚えた。 ――…カタリ 「……なあに、炎珠」 イノセンスが語りかけるように小さく動く。それはまるでミナに動けと言っているようだ。 「いやいや、あの中に入るの?無理だよー無理無理!だいたいあのティキとかいうノアは白髪君の獲物なんだよ?私の出番じゃないのー!」 横取りなんてまず私がされたら嫌だし、なんて状況を自分に置き換え出したミナは全身で面倒くさいオーラを醸し出していた。 「アレンくん!!!」 リナリーの叫び声にミナはその方向を見やると、アレンがティキに圧されていた。 「……あのノア、危ないな……」 まるでまだ途中段階のような、 「……………途中、段階?」 また、錯覚。 やめて、もういい。 思い出したくないんだよ。 嘘じゃない、本当だよ。 「あれは崩玉がまだ藍染サンを主だと認めていない証拠ッス。つまり、進化の途中段階だ」 「ッゲホッ!ゴホッ、ッ、グ、」 いきなり咳き込むミナを気に留める者はいない。というかティキがキレたせいで聞こえないのだ。 ミナは朦朧とする意識の中、静かに呟いた。 「燃ゆり灰となれ、炎珠」 業火が、ミナの躰を包み込んだ。 |