04


ルベリエは焦っていた。ノアの一族達が称した"神狩り"が急速化してきたことに。現に数少ない元帥の一人であるイエーガーが殺されてしまった。


黒の教団はそれぞれに班を分け、元帥を保護する任務に当たっている。

ソカロとクラウドは教団に着いたと報告が入ったが、残るクロスとティエドールはまだ報告は受けていない。



「ミナ」

「はい、長官」

「内容は把握していますね?」

「――勿論ですよ」

「……無事に、帰ってくること。それまでが任務です」

「…ふふ、分かってますよ!必ずこの白崎ミナ、ルベリエ長官の元まで帰ってきます」



ミナの言葉にルベリエはやっと満足そうに頬を緩めた。では、とミナはルベリエに背を向けて部屋から出る。

向かう先は、戦場だ



「――ミナ」

「あ…ハワード!」

「私たちもいますよ」

「マダラオ達まで……!」



入り口付近でミナを待っていたのは鴉だった。この2年で仲良くなった彼らを前に不安な心は次第に消えていく。


そう、どうしようもなく不安だったのだ


何せあまり中央庁からは出たことが無かったのだから。ずっと鴉の彼らを相手に鍛錬していたばかりで、外に出た覚えはない。



「マダラオ、テワク、ハワード、トクサ、ゴウシ、キレドリ……」



堪らず彼らの名を呼ぶミナの姿は普通の少女のようだ。今から戦場へ行くようにはとてもじゃないが見えない。


出来る事なら行って欲しくない、引き止めたい。


だが、それをしてしまう程馬鹿ではない。皆今この瞬間、敵と戦っているのだ。しかもミナは鴉とは違う、神に見初められたエクソシストなのだ。


どう足掻いても戦場に行かないという選択肢は、ない。



「…行ってきます!」



震える声をそのままに笑顔を浮かべたミナ。ふ、とマダラオ達は目元を緩める。



「「「「「「行ってらっしゃい、ミナ」」」」」」



愛しい家族に別れを告げ、ミナは飛び出した。