▼ 04
「はいっ。OKー!」
パァン、とこふっちゃんが夜トの背中を叩く。
「「死ぬかと思った……」」
「もー死んでるよー?」
はー、はー、と息切れするのは神器の四人と今回のお騒がせ人である夜トと雪音君。久しぶりに疲れた顔をした陽弥の頭をさらりと撫でた。
「これだから仕置き嫌なんだ…」
「チクッとすればすぐにやればいいんですよ!この病院嫌い!!」
「なんでここまでヤスミをこじらせた?辛かっただろうに…」
きっと誰もが気になっていたであろうその理由を兆麻が尋ねる。
「雪器は久々の逸材だ。オレはけっこう気に入ってるし、そう簡単に手放したくない。それに………」
そこで一度言葉を切る。そこで夜トが何を思ったのかなんて分かるはずもない。
ただ、夜トは雪音君のその"何か"に共感したに違いない。
「―――とにかく、こいつをちゃんと鍛えたかった。一発ドギツイ灸を据えてやりたくてわざとこじらせてみた。
このバカのためにすまねえな、礼を言う…」
いつ以来になるのか、夜トの真面目な顔に私は小さく笑った。
「そんなことのためにお前まで死ぬ目にあわんでも…」
「本当ですよ……、いろんなひとに迷惑かけて…」
「バカモノだ!」
「つーか一人で何もかもやってんじゃねえよ」
みんなからの厳しいお言葉。それを夜トは素直に受け止めた。
「…確かに、ひよりにまでこんなに迷惑をかけるとは思わんかった…。
すまん!!」
雪音君の頭も下げて謝る夜トの姿は、昔なら絶対見れなかった光景だ。
「おまえも謝れっ」
「ごめんひより、本当ごめんなさい…っ!」
二人の謝罪に、壱岐さんはガバッと二人纏めて抱きしめた。
その瞬間にツキンと痛んだ胸の事なんて、知らない。
「李卯もすまねえな、迷惑かけた…」
「ごめっ、ごめんなさ…!」
『ふふ、いいよ。こっちもお世話になったことあるんだから、おあいこだよ』
「いや…あのときの李卯の言葉がなかったらきっとこいつは転じてた」
『……んーん、それは…』
きっと壱岐さんの方だよ
なんて妬みの固まりみたいな一言をぐっと堪えて、何でもないと話を逸らした。
『あ、そういえば私…二人にきちんと自己紹介してなかったよね?』
「…言われてみればそうだな」
「ええーっ、りいちゃんしてなかったの〜?」
『みたい』
くつろげていた格好を正して、雪音君と壱岐さんの前に座る。にこり、と微笑み口を開いた。
『私は李卯、四神を纏める神なの。またお社に遊びに来てね。神器は陽弥、名は陽(はる)、器は陽(よう)。もう10年以上の付き合いかなあ?』
よろしくね、と最後に言うとこちらこそ!と元気な返事をもらった。
そうして和んでいた時、ある気を感じた。
「…李卯、これは……」
『うん……最近会ってなかったからかな…?』
「俺は会いたくねぇ…!」
『ふふ、喧嘩しないでね陽弥』
「っだー!!何なんだよお前ら!」
夜トが爆発したように声を荒げる。ああそうだ、
『夜ト、喧嘩しないでね』
「は?」
陽弥と同じ台詞を夜トにも言うと、夜トは何言ってんだみたいな声を出した。その理由を説明しようと口を開いた時、
「しっつれーしまーすっ!」
「こら、礼儀がなってないぞ」
「李卯ー、来たよー」
「ちょっと、あんたたち邪魔よっ!」
ガヤガヤと話し声がここまで届く。それに私と陽弥はあー、と額に手を置くのに対し、こふっちゃんたちは頭にハテナが浮かんでいる。
仕方ない、と私は立ち上がり外へ出た。
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